エンジン再始動後、さらにケラム川を遡ること数十分、いよいよ今日の目的地であるカンボット村に到着です。この村には再建されたハウスタンバランの建物があるということで、確かに川面からもその雄姿がうかがえました。お、大きいぞぉ!
桟橋から降りてタンバランの建物に近づくとその威容はさらに増すばかりです。高い木のないこの地域に、これほど丈の高い建物(=本柱として高い木が少なくとも2本必要)を建てるというのは容易なことではなかったことでしょう。どこから運んできたのやら。
さて、この立派な建物の中に上がらせてもらうこととします(ご覧の通り高床式なのでメインは2階)。しかし中に上がれるということは、このハウスタンバランがこの村における精霊信仰の対象とは位置づけられていないことを意味するようです。ちょっとガイドブック(現在絶版の「ニューツアーガイド」)より引用させてもらいましょう。
‥ハウスタンバランには自然全ての精霊が降臨すると信じられていて、数々の伝統的な秘儀が伝えられている。ここに安置される木像や絵画は超自然的な造形で知られる。(略)精霊信仰は村人の中心から少しずつ変化してきた。特に最近では貨幣経済圏に入ったため考え方が激変して、大きな村落では精霊の館ハウスタンバランが消えてしまった。かろうじて建物を持つ村落でも、信仰より観光資源として細々と残るケースも多い。(略)ハウスタンバランは同じ部族、それも男性以外には立ち入ることができない神聖な場所で、皮肉なことに、外国人が見ることができることは建物の崩壊の始まりを暗示している。
実際のところ建物に上がることはまったく問題がなかったわけで、そうなるとやはり‥と思わざるを得ません。しかしその一方でハウスタンバランの建物は高温多湿の場所ゆえしばしば建てかえられる(約20年に1回程度)そうですが、少し離れた場所には古いハウスタンバランがまだ十分に原形を保って建っていました。しかし、その建物への立ち入りは拒まれた我々です。
さては古いハウスタンバランこそ、このカンボット村における精霊信仰の最後の拠り所なのでしょうか。そう思いたいものです。しかしその建物がいつまで存在し、そして外来者をいつまで拒み続けることができるのか、それはわかりませんが。
というわけで、とにかく新(観光用)ハウスタンバランに上がってみましょう。
急な、木の幹に段を付けただけの階段を上がってみると、中は広々とした大部屋でした。床は椰子(竹?)の幹を平たく加工しただけで、歩くとミシミシと音を立て、しかも床の隙間からは地面が常に見えるというスリル満点ものです。もっともこれはこれで強度があるんだろうなと思える感じでしたが、床の薄いあたりを歩く時にはかなりびくびくものでした。
室内の奥には精霊の中心人物?とも思える絵が飾ってありました。その両側にも小さな精霊たちの絵が並んでいます。本来ならここが祈りの場とでもいうべき場所なのでしょう。そして入口の階段上からは、優雅に流れるケラム川の流れが望めます。時間の流れは川の流れと同じくゆったりのんびりですね。
さてここカンボット村はある彫刻で有名です。その彫刻は「ストーリーボード」と呼ばれ、一枚の板にその村での生活ぶりや周囲に住む動物との交流等を描いたものとなっています。以前アンコールトム(カンボジア)に行った時、寺院の周囲に当時の生活ぶりなどを石に彫り込んだ彫刻を見ることがありましたが(詳しくはこちら)、要はそれの木材版というところです。
ストーリーボードの数々とともに記念撮影っと。
ストーリーボードはこの地域の各村で作っているということではないようですが、ここカンボット村は伝統的にこの彫刻技術が受け継がれているようで、首都ポートモレスビーや、遠くはオーストラリアなどからも買い付け業者が訪れるほど評価が高いらしいですな。となると‥やっぱり欲しくなりました(笑)。かさばるんでお持ち帰りには不便なんですけれどねぇ(苦笑)。
基本的にボードの裏に値段が書いてあるので値段折衝の必要は特になし。しかし大きさはもちろんですが、基本的には材木の質と彫刻の質とで値段が決まっているようで、「こりゃいいな、木も重くてしっかりしているし彫刻も細かいぞ」系ボードの裏を見ると200Kとか400Kとか(1K=40円ね)、まぁさすがにそれなりのお値段がついています。とはいっても産直ゆえ絶対に安いんですけれど。一番高いといっても日本円で1万〜2万だったものなぁ。日本での仲介業者経由で買ったらその倍は軽くしそうですし。でも、ネットで見てみたらまだ仲介業者はいないみたいだし、よしいっちょやってみるか(笑)。
それはともかく、いくつか気に入ったものをピックアップしてみました。その中でも妙に手頃なお値段の一品がありました。何と幅1m、高さ40cmの三角形ボードにもかかわらず破格のお値段!たったK19(約800円)です!なぜかといえば、材質が軟らかいこと(だからえらく軽い=でも持ち運びには便利)と、その他一部に難があったからなのですが、こちとら商売人でもないし、これで十分です!というわけでめでたくご購入!
それでも幅1mもあるこのボードです。気に入ったのは人々の表情が明るいこと。
普段はこんなふうにディスプレイしております。ナミビアのキリンも一緒です(笑)。
さて、そんなこんなで買ったボードを手に、建物の外に出てきました。
人とボードとを比べると、その大きさがわかります。
画像が多くて重くなってしまったので、続きは次のページに回しましょ。