はるかに広いセピック川。流央を行くカヌー船団を遠くに見やりつつ目を移すと、岸辺には浮草の花。
アンゴラム村到着の遅れにより午後のうろうろ時間が減ってしまいましたが、まぁこればかりは仕方がないですね。最初のページからここまでずっと読んできた方ならおわかりでしょうけれど、PNG現地での旅行はそうそう予定通りには進みません(特に移動が絡むとうまくいきません)。「旅程はゆるやかに、希望の場所に行けなくなってもそれはそれで仕方ない」くらいの気持ちでないとイライラが募るばかりです。
さて、話をアンゴラムでの昼食時(とはいってもすでに15:00)に戻しましょう。遅い食事中の我々に、ウェワクから同行してくれたこの宿の女性がこう聞いてきました。
「今日の夕食ですが、エビでいいですか?」
実は最初は聞き取れなかったので「え?ナニデスカ?」と聞くと、単語がわからなかったと思ってくれたのか「ロブスターでいいですか?」というような感じで聞きなおしてくれました(お恥ずかしい話ですが、私のヒアリング能力はかなり低いんです。最初は「Prawnでいいですか?」だったと思います)。答えはもちろん「YES」です。やっぱり海老好きの日本人ですからね(笑)。
ところで、「ロブスター」=この地域=川海老という連鎖的想像はすぐに思いつきました。しかしまさかその食材、われわれ自身が直接買い付けに行くことになるとは!(笑)。
前のページでも書いたように、今回アンゴラムで乗り込むことになったのはカヌーではなく立派なボートでした(カヌーは一本の木を掘り抜いた素朴なものでしたから、本当はそれにも乗ってみたかったんですけれどね)。貸し切りですからゆったりひろびろ。何だかゼータク気分で幅広いセピック川を遡ることになります。ちなみに上の写真は静止画像ですから当然流れも止まって見えますが、実際の流れはかなり速いんです。岸辺から浮き草の流れを見ていると、どんどん下流に流れていくのがよくわかります。イメージとしてはメコン川中流域という感じの流れ、でもここはこれほどの川幅、しかも傾斜は緩い下流域なのにこのような流れの早さは何だか不思議です。江戸川@千葉県と東京都の境の川=ほとんど止まっているように見えるスローな流れ、を思い起こしちゃうからかなぁ。
さて、アンゴラム村のJetty(船着き場)を出発した我々のボートは、走ることしばしでアンゴラム郊外のマゲンドー2村に到着しました。この地域の総称はマゲンドー(Magendo)、でも集落がいくつかに別れているということで、それぞれに1.2.3‥のナンバリングが付けられています。しかし、もともとは別の名前で、別の生活(自給自足も含めて)をしていたんでしょうに、そのグループを1.2...というようにナンバーリングしてしまうのはどうなんでしょうね。最近の日本の地名変更とともに、ちょっと考えるところありです、ハイ。
ま、それはともかくとして、ボートはいよいよMagendo2村に接岸です。
Magendo2村。船着き場はこの大木の下です。
さて、この「2村」はエビの水揚げがこの辺りでNO.1だということです。どうやら川の流れ具合がエビの成育に適していることからこの辺りが産地になっているということなのでしょうか(生け簀のようなものも川の中にあったような)。ちなみにウェワクからの道路はアンゴラムで終わっていますから、この周辺の村に行くには船が唯一の交通手段となります。
というわけで、ピチピチ系川エビの買い出しです。とはいっても実際にはわがボートのオリバー君@船頭さんの1人(なぜか乗組員が4人もいたんです)が買い付けるのを見ているだけですから気楽なもの、値切り交渉もいらないしねぇ(もっともPNGでは首都や都市部の一部を除き観光客相手のボッタクリはほとんどないんですけどね)。
少年が大きな網を持ってきました。その網の中には「とぉ〜れとれぴ〜ちぴちエビ料理ぃ♪」(この表現でピンとこない人はまだ若いですな)となるはずの活海老が10数匹入っておりました。この写真で見る限りは「多少色の鮮やかなザリガニ」という感じです。大きさは‥あまり大きくないようにも見えますが、実際は下の写真の通り。
比較対象となるべき腕が斜めに写っているのでちょっとわかりにくいかもしれませんが、それでもこのエビがかなり大きい=食べでがある、ということだけはおわかりいただけると思います(日本で売られている大型サイズのブラックタイガーよりもさらに大きいです)。しかも、このオレンジは抱卵のメス海老というわけで、こりゃ貴重です。しかもこんな立派なエビ、おしんこどん日記によると「8匹で10K(1K=40円です、お忘れなく)」ということでしたから、1匹50円かぁ、安いというべきでしょう!でも、現地の物価水準から考えると相当に高いんでしょうね。
毎度おなじみ動画編(39) |
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村の岸辺ではサクサクを作る子供もいれば(サクサクについては後述)休憩用台座の上でくつろぐ子供もいて、何だか見ているだけでほのぼのしてきます。「この村の時計は太陽とともにあるんだろうな」と実感。翻って我々は、日常生活はもちろんのこと、ここPNGまで来ても「何時に起きて何時に出発!」ということを頭の中でやっぱり考え続けているわけで、「こりゃやっぱり何かが違うなぁ」と思わざるを得ません。どちらが人間らしい暮らしなのか?答えは明らかなはずなのに、それでもしがみついているわが人生恐るべしです(苦笑)。
さて夕食の買い出しを終えて次の村へ出発です!ちょっとオールで漕いで本流に出たところで船外機のエンジンをかけて‥これがまたそう簡単にはかからないのがPNG(笑)。前述したとおり流れはそれなりに早いので、こうしているうちにも船はどんどん下流に流されていきます。「ブルルッ‥、ブルルッ‥」空しいセル回し、何だか冬場のオフロードバイクのキックスタートを思い出します。実はこの時、船にはうちら以外に乗組員だけで4人も乗っていたので、それぞれ交替しながら一生懸命セルを回していたわけなんですが、それでもかからない時はどうあがいてもかからない!そして、だいたい200mくらい流されたかなぁと思ったその時です。村の方から一艘のカヌーがやってきました!
彼が勇ましくもやって来てくれたんですねぇ。
彼は、いつまでたってもエンジンのかからないこの船を心配してわざわざ様子を見にやってきてくれたわけです。ありがたいなぁ。
でもおかげさまをもちましてエンジンはめでたく始動!というわけで彼が安心して帰って行く、その背中を見ながら「ありがとう!」と(心の中で)叫んだ我々なのでありました。
【思いつきコラム】 「このあたりの人達は恥ずかしがり屋?」
ハイランド地方からいきなりアンゴラムに来てしまった我々ですが、この地域の最初の印象は「ハイランド地方の人達に比べて愛想のない人が多いなぁ」というものでした。でもいろいろな機会で接してみて何となくわかったことは‥ということでした。ちなみにアンゴラム村唯一の宿である「アンゴラムホテル」の人に聞いてみたら「日本人は‥う〜ん、ここにはまずほとんど来ませんねぇ」ということでした。セピック川流域といえば、中流域にある超高級カラワリロッジや、同じく中流域の中心となる村であるアンブンティのほうに目がいってしまうのか、あえてこちらを目指そうという人は少ないんですかねぇ。ちなみにアンゴラムに滞在中(2泊)、16室あるこのホテルで初日の宿泊者はうちらだけ、2日目はフランス人のカップルが1組泊まっていただけでしたし。
道ですれ違った人に「アピヌーン」などと声をかけると、ハイランドなどではごく当たり前のように笑顔&「アピヌーン♪」と返事が返ってきたものでしたが、ここアンゴラムでは返事のない人もいます。でも、ちょっとコミュニケーションを取った後なら状況は一変、ぐっとフレンドリーな笑顔&言葉が返ってくるというわけです。
ということは、この辺りの人は単純に「ヨソ者慣れをしていない」ということなのかもしれません。そのことに気付いてからは、何だかこの地を訪問したことを嬉しくなるように思うようになりました。アンゴラムに来て良かった。
さて、このあとはさらに別の村を訪ねます。これまた驚きです、ハイ。