この地域にはサゴヤシという椰子の木が生えています。不思議なことに、この木の幹には多くのデンプンが含まれているそうなのです。ほら、子供の頃にじゃがいもをすり下ろして漉し、デンプンを抽出したという経験はありませんか?(理科の実験でやったなぁ)。ここセピック川流域ではその作業をサゴヤシの木を材料にしてやっているというわけですね。そうして取り出されたデンプンのことをここセピック川周辺域では「サクサク」と呼び、日常食としてごく普通に食べられているようです。
ここでは、多少見聞きしただけの知識を最大限に活用し、この「サクサク」作りを紹介していくことにしましょう。
というわけで、サクサクの作り方っ!
その1.サゴヤシの幹を伐採し、幹の内部を細かく砕く。
ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、椰子の幹は普通の樹木とは違い繊維質の集合体です。ます。だから砕くとどんどん糸状にほぐれてくるんです。というわけで、まずは削り取った幹の内部をほぐすことから始めていきます。
内部を削り取られ、樹皮だけになったサゴヤシ。
毎度おなじみ動画編 |
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その2.水でさらし、しごき、デンプンを沈殿させる。
Magendo2村 | Magendo1村 |
濃いオレンジ色に見えるのがサゴヤシの砕かれた幹繊維です。これに川の水をかけた上でしごいています。
じゃがいもの場合はすり下ろして絞り出せばいいわけなんですが、サゴヤシの場合は繊維の間に挟まれているデンプンを引っぱり出さなければなりません。というわけで、繊維の束に水をかけ、繊維をしごくことによりデンプン質を抽出するというやり方をとっています。
毎度おなじみ動画編 |
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その3.抽出したデンプンを餅状にする
デンプンを含んだ水分は、下に置かれた桶(古いカヌーだったりすることが多いようでした)に流れ込み、そこでデンプンを沈殿させることになるようです。この後の過程は見ることが出来ませんでしたが、後日、このサクサクを餅状にしたものが売られているのをウェワクの市場で発見することができました。とはいっても、同伴のドライバーさんに聞かなければそれとはわからなかったでしょうけれど。
この少年の前に置かれた半円形の物体がサクサクの完成品です。小麦粉らしき粉を表面に塗って粘つきというか張り付きを抑えてあるために白っぽく見えますが、実際の色は濃いめの茶色。ちょうどお赤飯をついて餅にしたような感じの色です。1個50トイヤ(約20円)とは、製品にするまでの手間を考えると我々の感覚からいけば破格値というべきでしょう。
さてこのサクサクを購入し、ホテルに持って帰って食べてみることにしました。味は‥無味です(笑)。どことなくスモークされた感じなのはサクサクそのものの味わいなのではなく、餅状に練り上げた時についた香りでしょう。そして食感は‥いわゆる「牛皮(牛の皮じゃないよ、食品名ね)を少し固くした感じ」というところでしょうか。一口食べたあとの正直な感想は‥
「う〜ん、ここでしか食べられないローカルフードとはいえ、そう美味しいものでもないなぁ」
という感じでした。味がないまま食べても美味しくないので(もともとパプアニューギニアでは塩などの味付けはほとんどしないのが普通)、ここでは塩を付けてワインのおつまみがてら少しずつ食べてみることにします。するとどうでしょう、さっきまで「ちょっと購入を後悔」系だったはずのサクサク餅がどんどん減っていきます。いつのまにかツボにはまったというべきなのか、「やめられない止まらないカッパえびせん」状態に入りこんでおりました(笑)。
海を見ながら食すサクサク、これもまたPNGならでは。
というわけで、セピック川方面にお出かけの際は、お酒のお供にサクサクをお忘れなく。なぜかハマること請け合い!と、我々は感じちゃいました。
さて、お話は再びアンゴラム村に戻ります。