台湾温泉巡り2009

− 2009/12 台湾湯めぐり編その3 まずは鳩之澤温泉を堪能 −

バイクを借りることをあっさり断念したわれわれですが、次なるアクション、すなわち「タクシーのチャーター」をしなければなりません。片言でもいいから日本語または英語が出来るタクシーの運ちゃん(「運ちゃん」は台湾では「運転手」の意味の正式用語です。「ベントウ(漢字では便當(當=当)」と同じく日本統治時代の置きみやげ語というわけですね)と出会えることを期待しつつタクシー乗り場に向かいます。

ずらっと並んだ客待ちタクシーの中(一番手前)から声をかけてきた運ちゃんがいました。しかし現地語しかできないようです。ところでこの日のTakemaの行動計画はもう決まっていまして(そりゃそうだ当日だもの)、それは

というものでありました。ちなみに最初の3つのうち最初の2つ、すなわち清水地熱と梵梵温泉は野湯(台湾では野湯のことを「野渓温泉」と言いますので以下それに従います)なので、昨日温泉に入っていないTakema&おしんこどんとすれば、「いきなり野渓温泉からスタート!」という期待も高まるところなのですが、この日の行程はそこそこ距離があり、一刻も早く出発する必要があるというわけなのです。

それを説明するのは筆談で何とかなりますが、問題はその料金。台北市内などではメーターが回りますが、地方では料金の折衝が一つのポイントとなります。そのあたりの相場はいくらくらいなのかがよくわからないだけに、折衝には慎重にも慎重を期する必要が‥ほとんどありませんでした(笑)。

中国語しかできない運ちゃんの黄さん、こちらが現地語を話せないことを知ると「ちょっと待ってちょっと待って」とジェスチャーで示すと、どこかに電話をかけ始めます。もしかしてその電話先って‥。しばらくして電話を代わると「もしもし」という女性の声が聞こえてきました。

や、やっぱり(笑)。しかしこれで話が早く進みます。上記の予定をお話しし、何度かのやりとりの結果、こういうような料金提示が出てきました。

うーん、日本円で約7500円かぁと一瞬微妙に躊躇しましたが、3000元(約9000円)までならしょうがないかと考えていたのでOKということにして商談成立、さっそく出発です。Takemaは前方の風景写真を撮りたいので前部座席に陣取ります。台湾は右側通行なので運転席が左側ということで、助手席に座っているTakemaとすれば何だか「普段の運転席にいる」ような気がして不思議な感じ。

というわけで運ちゃん(黄さん)の運転するタクシーでいざ台湾の山あい温泉3湯を目指して出発です。道路がいろんな角度から交差していて道順がわかりにくい宜蘭市内も、黄さんの運転ですいすい。ということは、バイクを借りていたら、行きはともかく帰りは宜蘭駅にたどり着くのは相当苦労したはずだということに早くも気づきました。それだけでなく、やはりここでタクシーをチャーターしたことがやはり大正解だったのだとこの日の終わりに実感したわけですが、その理由についてはまたあとで書きましょう。

さて黄さんは途中でGSに寄り給油。ということは「結構走りでがある距離」ということなんですよね。そういえば2009年3月のタイのチェンマイでも、トゥクトゥクにルアンルン&サンカムペーン温泉往復を御願いしたら、いきなりGSに立ち寄ってガソリン満タンにしてたっけ(その時のページはこちら。GS絡みのことは書いてませんが)。

黄さんによると「最初に一番奥の鳩之澤温泉へ行き、そこから戻るような形で梵梵、清水地熱に寄る」とのことで、もちろんこちらも異存はありません。道中は基本的に全て舗装の2車線路で、適度なワインディングが続くことから、確かにバイクで走ったら気持ちよさそうではあります。1ヶ所だけ土砂崩れによる未舗装の迂回路がありましたが‥(これが2009年夏、台湾に大きな被害をもたらした台風8号の影響の「小さな1つ」であり、そして台湾南東部はまだその復旧作業から抜け出せていないと実感したのはこの数日後のことでした)。



左上画像は「帰りに寄る梵梵の入口か?」と思ってパチリ。正解でした。右上画像はかつての森林鉄道車両です。

しかしもう随分走っているはずなのにいっこうに到着しない‥。運転席のトリップメーターを最初に見ておいたのですが、もう50km以上走ってるぞ(しかも後半は山岳ワインディング路)。こりゃ思っていたよりはるかに遠いなと思っていた頃、ようやくゲートに到着です。温泉は「太平山国家森林遊楽区」内にあるので入場料が必要なのです。



というわけで、入場料150*2(タクシーなので運ちゃんは免除)+車両入場100=400元を払っていざ公園内へ。

そこからまたくねくね路をしばらく走って、モウモウたる源泉の湯気を林越しに見たところでようやく鳩之澤温泉に到着です!

ここ鳩之澤温泉は、どこかで読んだのですが戦前の日本が開設した温泉だったそうで、当時は「仁澤温泉」と呼ばれていたのだとか。しかしまぁよくも当時こんな山奥にまで温泉施設を造っていたものだと驚かされます(ただしこのあたりの記述はちょっと根拠がいいかげんであやふやです。詳しい方々によるご意見をいただきたく存じます)。もちろん現在の施設は新たに作り直されたもので(しかも設備が新しい)、レセプション周りの雰囲気(右上画像マウスオン)は、どう見ても日本の高級温泉宿そのものといった感じです。ただしここは日帰り施設なんですよね。宿泊が出来れば絶対にここに泊まろうと思ったはずなんですが‥。
さてここで、台湾の温泉入浴の基本についてのインフォメーションをば。台湾の温泉が現在のように台湾人によって日常的に利用されるようになった大きな理由として戦前の日本統治時代を抜きにして語ることは出来ないと思いますが、ただそこに台湾本土や中国の習慣も加わっていることから、どこでも日本のように入浴することが出来るわけではありません。

まず一番大きな違いは「大浴場にせよ露天風呂にせよ、不特定多数で入浴する浴槽では裸が御法度」という大原則です。ごく一部の共同浴場などを除き(新北投温泉や陽明山温泉などの共同湯他がそれにあたります)、たとえ男女別の湯船であっても水着着用が原則です。それに、なぜか水泳帽も着用するというのが基本です。

この水泳帽、「お湯を髪の毛で汚さない」という清潔観念から着用するようになったのだと思いますが(ちなみにお湯の中で身体をこするのはもちろん御法度=日本と同様ですが、肌をなで回したりするのも基本的にはマナー違反だと聞いています)
しかし水泳帽ねぇ‥。ちなみにわれわれは持参しませんでした(笑)。

その一方で、どの温泉施設にも必ずあるのが「個人湯池」や「家族湯池」(いわゆる個室や家族用の浴室)。ここではもちろん「知らない人」はいないはずなので日本と同様に自由なスタイルで入ることができます。このような浴室の場合一部の例外を除いて浴槽に湯は溜められておらず、入浴しようとする人が自分で湯を溜めて入浴し、上がるときには湯を抜いてしまうのが普通です。したがって、
このような湯池に入浴する場合はいつでも「一番湯」を楽しめるのが嬉しいところでもあります。

ただ、浴室そのものが小さいことから、日本のような開放的な浴室空間は期待できません。最近は一部で「日式」の入浴スタイルを取り入れる施設も出てきたということですが、「日式」と書かれていてもそれがそのまま日本と同じ入浴形式というわけではないようなので、「先客さんがいたらその人の入浴スタイルに従う」のが一番でしょう。

なお、ホテルであっても日帰り入浴はだいたい可能です。中にはヒノキ風呂なんかもあったりするので、「ご予算に応じて」考えればいいかと思いますが(謎笑)。

また特に共同浴場に言えることですが、脱衣場と浴室との区分が非常に不明確です。つまりは「先客さんが身体を洗っているすぐ脇=びしょ濡れエリアを通り、その付近にある脱衣ボックスに服を入れてそのまま入浴(もちろんかけ湯や事前洗いは日本と同様ですが)」という感じになります。「脱衣場」という考え方は共同湯ではほとんど考慮されていませんので覚えておきましょう。どこで靴を脱げばいいのかについては、これまた先客さんの靴のありかを見ればすぐわかると思います。
さて話を鳩之澤温泉に戻しましょう。もちろんこの温泉にもいろいろな施設があるわけですが、今回はあえて屋外の露天SPA湯池(ここでの正式名称は「戸外SPA池」)を選択しました。もちろん水着着用です。せっかく自然豊かな山の中までやって来たのに、その景色も見られない屋内浴室に閉じこもってしまうのはいかがなものか?という思いからだったのですが、これがまた大正解の選択でありました!

ひろーい露天湯池の脇には男女別の更衣&シャワー室棟があります。プールというよりはやっぱり露天風呂といった方がふさわしい広い湯船からはモウモウと湯気が立ち上り(季節的にも冬ですからゴーカイ)、周囲には屋根付きの休憩テーブルも用意されていて、これはもう何ともいいじゃないですか!

ちなみに左上画像にマウスオンすると、ここ鳩之澤温泉について中国語と英語で書かれた説明文画像に変わりますので、興味のある方はお読み下さいませ。源泉湧出時の温度は140度のアルカリ系炭酸カルシウム泉であるとか何とか書いてあります。

さて、それではいざ入浴といたしましょう!



湯加減といいロケーションといい湯船のバラエティさといい、水着であることを除けばヒジョーにすばらしい温泉であることに間違いはありません!しかも驚いたことが2つ!

まず、すぐ上にも「アルカリ系炭酸泉」と書きましたが、分析表を見るとPHは7.63の炭酸カルシウム泉と思われます。ところで確かにアルカリ性ではありますが特に強アルカリというわけではありません。しかーししかし使ってみるとこれがビックリ玉手箱!

そして次にこの温泉の色なのですが、無色透明のはずが空気に触れてしばらく経ったであろう湯のエリアではそこそこ青白の濁り湯になっているということなんです。では、その色を見ていただきましょう。



源泉投入部およびその近くでは、特に青いわけではありませんが‥(ちなみに浴槽底の石は濃紺色だったかと)



投入部から離れてみるとこんな感じ(両画像マウスオン)。右上画像は手前の方が深いのですが、近いのに目地が見えにくくなっています。

この色が上空の青空を反射している可能性もありますが、曇りの日に撮影した他サイトでも同じような色でしたから、すごくローカルな例を出せば、NZ南島のTekapo湖は曇っていようが雨が降っていようがあの色なのですよ!」(詳しくは「テカポ湖 青」でテキトーに検索してね)。

ちなみにこの日のTakema日記によると「ここ鳩之澤の湯のヌルヌル度はこれまでTakemaが入ってきた中でも(日本を含めて)5本の指に入るかも知れない」とあります。とにかく泉質的にもかなりいい感じの湯でありました。確かにぬーるぬる(笑)。




泉質を抜きにしてもリラックスできること請け合いの湯であることは間違いありませんし。



少し離れたところには源泉の怒涛の湯煙が見えてます。ちゃんと湯温表示板がありました。



成分分析表示もあるスグレモノ。なお脱衣場には脱水機まで備え付けられています。水着での湯めぐりにはありがたいです。



従業員さんが何か動物を手にして来たと思ったら台湾リスでした。慣れているのか弱っているのかは定かではありません(たぶん後者)。

湯上がりには併設の食堂で昼食をとり、非常にまったりしたわけでありました。もっともすでに13:00を回ってるんで、これからあと2つ野渓温泉に行こうとしているわれわれのことを黄さんはさぞかしイライラしながら待っていたことだろうと思いきや、駐車場に出てきたわれわれに対してジェスチャーと中国語を交えながら

とおっしゃるではありませんか!というわけでありがたく見に行った次第です。場所的にはすぐ下なんですが、そんなことよりもその心遣いが嬉しいです。



怒涛の湯煙、ここにも見参!もしかして中央の山のモチーフは‥富士山?(確証なし)。右上画像マウスオンで説明画像に変わります。



さてそんなわけで今回の台湾初湯はかなり満足のうちに終了したのでありました。そしてこのあと、野渓温泉*2が待っているのでありますがどうなることやら。
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