台湾温泉巡り2009

- 2009/12 台湾湯めぐり編その8 そして紅葉温泉へ -



手書きの「11:17」の字は、発券時に駅員さんが「蘇澳発はこの時間だからね」とわざわざ書き込んでくれたものです。

さてそんなわけで蘇澳新駅に戻って荷物をピックアップし(ヒヨコたちはまだその場にいました)、11:53発の(キョ)光号が来るまでホームのベンチに座って待つことに。主要駅であれば電光掲示板に「次の列車」についての情報が書かれているので乗り間違える心配はまぁないでしょう。ん?反対側のホームに台北方面行きの(呂)光号が入線してきました。停車して乗客が降りようとする光景を見ていると‥



皆さんドアを手で開けてました。これについてあらためて調べてみると、(呂)光号の中でも古い車両(というか未改造の車両なのか?)は今も手動式のドアなのだとか。うわー何だかとっても懐かしい感じがして個人的には大好きなんですけれど(笑)。

そのあと、お腹が減ってきたので(すぐ近くで「便當(後述)」を食べている人がいたので余計に減った)ちょっとお手持ちの食べ物をつまんでいるうちに、ようやくわれわれが乗る(呂)光号がやってきました。
「南行き(呂)光号入線」
ただの入線風景です。

そんなわけでいざ列車に乗り込んでみると‥先ほどの自強号に比べて確かに足置きこそありませんがリクライニングもあるし、車内設備的にも特に大きな違いはない感じです。ただ、やっぱり所要時間は自強号よりもかかるらしく、蘇澳新駅から花連駅までの所要時間を比べてみると10-20分くらい遅い感じです。もっとも蘇澳新駅に停車する列車の中で、下車駅である瑞穂駅(花蓮より先:直通は少ない)まで直通し、なおかつ時間的にもちょうどいい列車がたまたまこの(呂)光号だったということなんですけれどね。

そんなわけでビールを飲み始めます。と、ここで車内の仕切り壁左上にある、ある小さなプレートに目が行きました(右上画像マウスオンでその画像に変わります)。「中華民国六十八年」とありますから、この年(2009年)が民国歴で98年であることを考えると、この車両はちょうど30年前に製造された古い車両であることがわかります。

ただしたとえプレートはそうであっても、車両内の各設備はいろいろと整備更新が行われているはずです。たとえば椅子だって、30年前に設置された椅子が今でもあれほどクッションが利くはずはありませんしね。日本の場合は改造時プレートを並べて掲示したりするものですが、台湾ではそういう習慣がないということなのでしょうか。

乗り心地も全く問題ありません。おしんこどんなどはいつものようにぐっすり寝てしまったくらいです(あ、バイクのリアシートでも寝ちゃう人なんだからあまり乗り心地の指標にはならないかも(苦笑))。そんなわけで1時間15分くらいで台湾東部の大都市の一つ「花蓮」駅に到着です。



ホームの隣にはJR九州885系「かもめ」と同型の振り子式自強用車両、「太魯閣(Taroko)」号が停車していました。

さてしかし、われわれの乗ってきた(呂)光号のみならず、花蓮以南に直通する列車は軒並みこの駅で10-15分ほど停車するのです。それは機関車を付け替えるため。ここ花蓮から南の区間(台湾東南部)は非電化区間なので、直通であればどうしても停車時間を取らなければならないわけです。太魯閣号がここまでしか走れないのも同じ理由です。
ただし一部区間においては架線用の電柱設置およびその基礎工事が行われています。まだまだ時間はかかるでしょうが、台鐵の島内周回路線はやがて全て電化されることでしょう。

しかしこの停車はわれわれにとって思い切り助かります。何たって「昼食を手に入れる」何よりの時間を与えられるわけですから!

ちなみに台鐵の主要駅?構内では駅弁を売っています。ただし名称は「弁当」ではなく「便當(當=当)」。音読みすればわかると思いますが、この語も「ウンチャン(運ちゃん)」同様に日本統治時代に使われていた言葉が現地語化しているわけです。

幸いなことにわれわれが乗っていた車両はホーム売店の真ん前に停車しました。日本のホーム売店と酷似した品揃えは何だか嬉しい。でも、便當が置かれていないんですが‥。と、その時です。売店のおばちゃんに地元の方が何やら話しかけると、おばちゃんは足下に置かれていた発泡スチロールの箱を開け、そこから「便當」を出して渡したではありませんか!

喜びつつ箱を指さし日本語で「それ、2つ」と指のジェスチャーも合わせて示すと、売店のおばちゃんはさもあたりまえのようにこうおっしゃったわけであります。

うわー駅売店のおばちゃんが日本語を話すとは思わなかったぞ!しかもこの人の発音やアクセントは「後付けで身に付けた日本語」ではないと直観的に察知しました(われわれの「ジャパニーズイングリッシュ」が英語のネイティブスピーカーからすると「ん?ネイティブじゃないな?」とすぐに理解されるのと同じように)。台湾の東部、特に南東部エリアでは日本語の通用率が高いということを聞いていましたが、売店のおばちゃんまでも日本語が通じるとは‥。

しかしここから数日間は「どうしようかと思った時に、

そういう意味ではこの売店おばちゃんとの会話はまだまだ可愛いものでした(笑)。ところで日本(駅弁)と台湾(便當)との一番大きな発想系の違いはどこにあるかというと、「台湾の人たちは『冷たいご飯』を食べない」というところにあるそうです。つまり日本の駅構内で売られている弁当は、冬であればそれが製造からまだ1時間くらいであっても屋外(お店のカウンター)に置かれていればすっかり冷え切っていますから「台湾の方々のお口には合わない」というわけです。だから「出来たて便當」しか置かないし置けないということなのでしょう。

ではでは、台鐵花蓮駅で買った「便當」のフタを開けてみると?

一面に敷き詰められたご飯(これが基本のようです)の上に、大きな大きな豚ロースがどどん!その右横には茹でタマゴ、でもこれも日本のおでんタマゴと同じく煮込んでいる感じですよね。ロース肉にのしかかられているピンク色はハムです。でもってロース肉の左右にはおしんことサラダ。ど真ん中ロース焼肉の大きさと、この「便當」のお値段がNT$60(約180円)であることを考え合わせると、その結論は‥

と申し上げるべきなのではないかと存じます。でも実はこの翌日「これぞ便當!」の真骨頂を目の当たりにしたりしましたので、実は上のロゴお世辞はここだけのものだったりするのです(苦笑)。

そんなわけでディーゼル機関車+荷物車郵便車(懐かしいなぁ)を編成に加えた(呂)光号は、どんどんと台湾東部を南に下っていきます!



「緑が豊か」に見える左上画像は全て植林。災害復興事業でしょう。右上画像は‥実はコスモス畑なんです。



気がつけばほとんどお客さんがいなくなっていましたのでパチリ。あ、走行中ドアも開いたままで嬉しい♪

さてそんなわけで定時の14:47に下車駅である瑞穂駅に到着です。「瑞穂」とは何とも響きのいい名前で、もちろんお米関係に由来する名前であり、この界隈で収穫されるお米は台湾でもある種のブランドになっているようです。

地下道を通って改札口側のホームに上がってきてびっくり。気根を生やした植物がホームの屋根にずらーっと並べられていて、その根がカーテン状に連なっています!これはすごい!ちょうど南回帰線(熱帯/亜熱帯を区分する線)上に位置する駅なのですが、まさにそんな地理的状況を表現しているようで、もう一発で気に入りましたよ瑞穂駅!(右上画像マウスオンで別画像に変わります)。

そんなわけで瑞穂駅の改札を出てみるとタクシーが数台。この日の最終目的地である「紅葉温泉」にはタクシー以外では行かれないので、いずれにせよこのイエローキャブのどれかに乗らなきゃと思いつつも、余裕を装って「外国人だけれどね、別に焦ってないよ」という感じでうろうろ((いやそんなの無理があるって)。

と、ここで駅構内に張られた「公告」掲示にビックリ!右上画像がそれなのですが、それによると「不通になっていた南回り線枋寮-屏東区間は今月(2009年)12月30日に開通します」ということなのです。われわれが帰った直後に再開通するってことなのね。何てこったい‥。もっとも、もともと利用予定の区間ではなかったわけですが(笑)。

で、面白いのが次の記載。「開通に伴い、自強号2061、2052、93(列車番号)、及び(呂)光号94の4列車については『免費乗車』といたします」。ひゃー、開通祝いで料金無料の太っ腹というわけですね!「ご迷惑をおかけした」ことへのお詫びというか感謝の気持ちとしての措置なのでしょうが、こういうのは何だか日本でもやって欲しかったりして。

さて、この日のお泊まり場所は「紅葉温泉」なのであります。駅からはそこそこ距離があるしバス便は非常に少ないので当然タクシーとなるわけですが、われわれ(というかTakema)としては、タクシーの「運ちゃん」に御願いしたいことがあったのです。それは‥

というわけでさっそく「運ちゃん」のお兄ちゃんと交渉です(右上画像マウスオン)。というわけで日本語英語のわからない「運ちゃん」が取り出したのはもちろん携帯電話。どこに電話をかけているかは‥もうおわかりですよね(笑)。わからない人は前のページをよく読んでね。

で、結論です。日本語オペレーターの方いわく「近距離なのでそれはできないそうです」。ま、そうかもしれませんね。実は最奥の紅葉温泉までだって10kmないですからね。また、「紅葉(ホンイエ)温泉-瑞穂(ルイスイ)温泉の距離は1kmくらいだよ」という運ちゃんの言葉(ここだけ英語だった)を聞き、「それじゃ、まずは紅葉温泉まで行ってもらってチェックインした上で、歩いて往復したっていいな」という気になり、まずは宿まで登ってもらうことにしたわけです。

また、翌朝の南行きチケット(台東行き自強号及び乗り継ぐ枋寮行き自強号も)もこの駅で購入したので、明朝8:00に宿に迎えに来てもらうことも(これは筆談で)確認し、よーしこれで明朝の憂いはなくなったぞ!そんなわけでタクシーに乗り込み、いざ紅葉温泉へ。

あとで歩いてこなければならないので、瑞穂温泉の場所をしっかり確認します(ふむふむ、この角を曲がった先にあるのね)。で、あとは紅葉温泉‥

でもいっこうに到着する気配はありません。と、「運ちゃん」がこんな感じでのたまいました。

そうだよなぁ。見ていた感じでは2km+αはあるはず。でもまぁ歩行圏内ではあるのでよしとしましょ。というわけで道のどん詰まりにある紅葉温泉旅社に到着です!



まさに山麓の秘湯という趣の宿です。でも案外に規模が大きく敷地も広くてびっくり。おお、バイクも止まってる!



きわめて日本的な正面玄関ですよね。それもそのはず、この建物は日本統治時代の昭和初期建造らしいです。

さてチェックインをすると、こちらの方もカタコトの日本語は理解できるみたいですね。到着が早かったので(15:15)まだほとんどお客さんはいないみたいです(そりゃそうでしょ)。案内されたのはコテージ棟で、ベッドが2つ+お風呂付きの部屋でありました。



そんなわけで、畳敷きの部屋(本館)を見せてもらうことにしました。



玄関を上がると「ここはどこ?」という感じの懐かしい風景が広がります。湯治宿の風情そのままです(右上画像マウスオン)。

あえてこの部屋に泊まるように御願いしてもよかったんですが(この日は満室ではなかったし)、コテージに比べてちょっと部屋が狭く、またお風呂が併設されていなかったのでそのままコテージの部屋でいいやということにしました。でも空いていたわけだし、せっかくなら「昔ながらの部屋」に泊まるのもよかったかな?(今さらちょっと後悔)。

さてこのあとはテクテクと歩いて瑞穂温泉に行ってこなくては。数日前が冬至でしたから台湾であっても日が暮れるのは早いですし、それに先にここの湯に入ってしまうと「湯上がりのまったり」で行く気をなくしてしまいそうなので(笑)。というわけで紅葉温泉入浴は後回しにします。
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