- アイスランド2010夏 (14) Gullfoss(グトルフォス)で大滝見物 -

Gullfossへはすぐに着いちゃいました。駐車場には結構な数の車があり、さすが大観光地ですね。軽食レストラン兼みやげもの屋とビジターセンター(トイレ併設)とがありますんで、おみやげはともかくとしてもトイレはありがたい(笑)。
【ゴールデンサークル】

前ページのGeysir(ゲイシール)もそうですが、ここGullfoss(グトルフォス)やÞingvellir(シングヴェトリル)、その他われわれが泊まっていたHverageldi、さらにはSelfossなどのエリアは「ゴールデンサークル」と総称されており、首都レイキャビクからの日帰り遊覧ツアーなども多く出ています。したがってこのあたりは「アイスランドで一番人気の観光地」となっているわけです。観光客が多いのも当然ですね。
天気は相変わらずイマイチの曇りベースなんですが、雨が落ちてこないだけ良しということにしていざ滝見へと‥ん?滝はどこにあるのさ?



板敷きの遊歩道の先を見ると‥水煙。なるほどあの下に滝があるというわけですね。

というわけで遊歩道をトコトコと歩いて行くと‥おお、眼下に目指す滝が見えてきました!というかこの滝、やたらに大きいっ!華厳の滝はおろか尾瀬にある三条の滝どころのレベルじゃない!(そりゃそうか)。ザンビア&ジンバブエ国境にあるビクトリアフォールズには全体の大きさこそ負けますが(なお2008年のビクトリアフォールズ訪問ページはこちら)、瀑布が一ヶ所に集まっており、しかも本流のすぐ近くまで行かれるという点ではこちらの方が上かもしれません。



遊歩道は滝のギリギリ近くまで伸びています。流れ落ちる直前の本流に触ることも可能です。



全体像を撮影したあと、遊歩道を滝の落ち口近くまで歩いて行きます。場所によって水煙が降り注ぎます(笑)。



上の方の画像でわかる通り、滝は2段に分かれています。水煙を遠くから撮影すると右上画像のような感じですが‥



実際はこんな感じでどどどーっと巻き上げられています。一応ロープでガードされていますが‥



こんなロープですから‥日本では考えられない「自己責任の世界」。おしんこどん、そこでY字バランスって‥(右上画像マウスオン)。



帰り道に未練がましく撮った画像がこちらです。やっぱりスゴイっ!

いやー、滝の見物ってなかなか長いコメントを付けられませんね。というか、実際に滝を目の前にしての水の動きとその轟音から感じ取られる「思い」を文字で表せるほどTakemaの日本語表現力がないということか‥「圧倒される」というひと言では片付けにくい、不思議な感覚を抱いた次第です。となると、せめて動画を見ていただくしかありませんね(結局いつものパターンに持ち込むしかないというわけです)。
「Gullfoss(グトルフォス)をじっくりと。」

で、このあとは当然再び駐車場へと戻ります(なお、Gullfossの駐車場は上下2箇所あります。下段の駐車場からの方が滝そのものへのアクセスは近く高低差もないのですが、上画像のように滝の全景を高所から眺めることは出来ません。インパクト的にも上段からアプローチする方がお勧めです。なおツアーのバス等はほぼ間違いなく上段の駐車場に向かうでしょうし、ビジターセンターやトイレ、そしてお土産屋&軽食処も全て上段にあります)。

ちなみに左上画像の板敷き遊歩道なんですが、板が比較的薄いのと、横木の下に通されている縦木が結構中央寄りに設置されていることもあり、横木の端が欠けているところをあちこちで見かけました。まだそれほど古い板敷きではなさそうですが、劣化=端割れは結構早いペースで進んじゃうのではないかとちょいと気がかりです。横木をもう少し厚い部材で構成すれば済むと思いますが、いかんせん「森のないアイスランド」なのですから多分この木材も輸入なのでしょう‥(厳密には僅かに保護された林というか森はあるようですが、伐採するほどの木材資源にはほど遠い)。

そう考えると、尾瀬の木道などはあまりにも贅沢な厚みを持っていることが思い起こされ、日本の森林資源の豊かさを思わずにはいられません。大切なのはその資源を「どう生かしどう守り、そしてその恵みをどう使わせてもらうか」なんですよね。そしてその捉え方も時代によって変わるわけで、かつて尾瀬沼を通る道路計画(現在の群馬県大清水 - 福島県沼山峠をつなぐ路線)を阻止せんがために時の環境庁長官に直訴し、政治判断により道路計画の中止を勝ち取った平野長靖氏の存在は有名です(30年ほど前、この方及び長蔵小屋の歴史について東京都立中央図書館=有栖川公園内にまで調べに行った記憶がありますので多少詳しいんです)。
2010年現在、CMで「わたしたちは長年尾瀬の自然を守ってきました」と訴える現在の東京電力ですが、実は大正の頃からその前身会社が「尾瀬ヶ原全域をダムとして水力発電のために有効利用しよう」としてきた歴史があります。この一連の流れについてはWikipedia の「尾瀬原ダム計画」がさしたる偏りなく綴っていると思うのでキーワード入力の上ご参照下さい。

本来日本有数の「ダム候補地」であったはずの尾瀬周辺が今や「ダムの底に沈むことはあり得ない」ということで衆議一決しているのも様々な時代の流れの結果なのかもしれません。ちなみに現在の東京電力はこの地域における水利権を一切放棄しています(1996年)。
で、Gullfoss(グトルフォス)の話に戻りましょう。尾瀬の木道から自然保護、そしてダム計画の断念に至るまでの話は「Takemaのいつもの脱線」ではありません(苦笑)。実はここGullfoss(グトルフォス)にも似たような過去があったようなのです。以下に「地球の歩き方」Gem Stone アイスランド編の記述を引用します。

20世紀のはじめには、ここに外国資本で水力発電所を作る計画がもち上がり、滝はダムに沈んでしまうことになるかもしれなかった。これに立ち上がったのが滝の近くに住んでいた少女で、発電所を作るなら滝から身を投げると迫った。結局、企業の資金難などもあり発電所建設計画は頓挫し、1979年には自然保護区の指定を受けた。
うわー、何だか長蔵小屋平野三代の方々(現在は四代目らしい)と似たような「身をなげうっての開発阻止」だったんですね。背景には彼女を支持する人々の存在もあったのでしょうが、それとて彼女(シグリット)の積極的な主張と行動なしには語れない世界でしょうから。

ここGullfoss(グトルフォス)が1900年代初頭から水力発電ダムの候補地として挙がっていたのは、もちろん怒涛の水量の魅力からでしょう。しかし、上の画像のいくつか(特に2段上の少し大きめ画像)をご覧いただければわかる通りこの滝の周辺には大きな山脈はほとんどなく、遠くに見える僅かな(それほど高いように見えない)山々があるくらいなのです(えっと、このタイミングでまだ2段上の画像を再確認していない皆様、すいませんがもう一度「滝のはるか奥に見える小さな山々」を確認した上で次の文章を読み進めてくださいませ)

しかし再び車に乗って次の移動先に向かう途中、おしんこどんが「何かを発見」しました。

そう、その通り!実はこのGullfoss(グトルフォス)の源流は「溶け出す氷河の水」なのです!だからこれだけの平原地帯を流れる川にもかかわらずあれだけの水量を誇っているというわけですね(おそらく上記画像の氷河は「Langjokull(ラングヨークトル)の一部だと思われます。ちなみにLangjokull(ラングヨークトル)とは左上画像の奥に見えている広大な「氷原」で、そこから谷に向けて流れ出すベロのようなものが「氷河」なので、氷原と氷河とは別物だとお考え下さい。

いずれにせよ、氷原を背後に持つ氷河から流れ出す水量が「日本の高山において夏場の谷あいに残る雪渓から溶け出す」水量のイメージとは比較にならないほど多いのは間違いありません。アイスランドの場合、そのいくつかの氷原の地下には活火山が「ちょっとした休憩」をしているわけですから、火山噴火による「いざという時の洪水」はとてつもない量になるということがわかると思います。氷河の氷がマグマの熱で一気に溶けて流れ出すわけですから!

ちなみにアイスランドでは近年でも1996年にVatnajokull(ヴァトナヨークトル)からの噴火底洪水によりR1に架かる橋が破壊され(その残骸は現在でも記念碑的に残されている=あとの方のページで出てきます)、また2010年4月のEyjafjallajokull(エイヤフィヤットラヨークトル)火山の噴火でも洪水が発生し火山南西部の川に架かる橋が被害を受けています(翌5月には復旧)。このようにアイスランドにおける火山活動は、活動としては小規模でも洪水を伴うことが多いことから被害が拡大しやすいということが言えそうです。

さてそんなわけでGullfoss(グトルフォス)の滝見物もおしまいです。と、時計を見ればもうすでに16:30。うっはぁ、今日のメイン移動はこれからなのに!(ちなみにこの日ここまでの移動距離は約80kmなのですが、目指す目的地まではここから160kmもあるのです)。しかも最後は長いダート路+川渡りまでありますから、仮にこれが北海道バイクツーリングだったりするとかなり焦り始める頃ではあるのですが、やはりここはアイスランド、夜は23:00頃まで明るいこの時期ですから日暮れまではまだまだ6時間半くらいあるわけで安心して移動可能。ではでは行ってみまSHOW!
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