− その1 川原湯温泉「笹湯」 −
(2006/11/12訪問)
約ひと月の間ほぼどこにもお出かけしなかった秋というのはここ数年で記憶にありません。公私ともいろいろありましてまぁしょうがなかったんですけれどね。そういいながら金曜の夜は痛飲してしまい、せっかくの連休初日の土曜日は昼過ぎまでノビておりました。何だ、忙しいわけじゃないんだといわれればそれまでです(苦笑)。というわけで日曜日、とりあえず普段の平日よりもちょこっと早い時間に千葉を出発しました。
今回の目的地は‥那須にしようかどうしようかちょっと迷ってはいたのですが、ちょうど北西の季節風がぐぐんと吹き込んでいる気圧配置だったので山の上はパス。しかも紅葉の動きが全体として遅めの今秋ですから、紅葉の旬を迎えていると思われる場所もパスすることに。うーんどこにしようかと思っていたときに、ふと思い出したのが「ダムに沈む川原湯温泉」のことでした。
「八ッ場ダム」(ちなみに「やんば」と読みます)。関東以外にお住まいの方々にはほとんど馴染みのない名前でしょうし、関東周辺の方でも「ん?そんなダムあったっけ?」とお思いの方が多いのではないかと思います。そう、このダムはまだ完成していません、というか、2020年頃?に完成してしまう予定の(微妙な言い方ですが)ダムなのです。
Takemaは親族(自分の故祖父)が嬬恋村に別荘を持っていたこともあり、子供の頃からこの界隈によく来ていたんですが、その頃から「この吾妻川の下流にはダムが出来る予定だ」ということを聞かされていました。吾妻渓谷という景勝もダムに沈み、川原湯の温泉もそっくりダムに沈んじゃうんだよと聞かされていました。その頃は、「そんなに広いエリアを全部湖にしてしまうなんて、すごい技術だなぁ」とくらいにしか思っていませんでしたが、一応大人になるにつけ、あの「関東渇水」をあまり聞かないようになってからは「ホントに要るのかねこのダムは?」と思うようにもなりました。
しかし2006年7月に、たまたま「通りがかったついで」くらいの気持ちで「林温泉」なる共同湯を探したときに、迷いながら地図にも載っていない道をあちこちうろうろしているうちに(実は工事車両以外通行止めらしき道にも入りました)、この地域の現実を気づかされました。それは‥。
正直いって全てが過渡期で、古い地区(移転予定地区)は壊された家と残っている家との虫食い状態。かといって移転地区も同様なのはいうまでもなく、共通しているのは「このままでは地域コミュニティを維持できない」ということです。
かといって、昭和24年に策定された「利根川改修改定計画」に端を発するダム計画を、60年近く経ったいまだに引きずっているというのもおかしな話ではあります。この辺の流れについて詳しくお知りになりたい方は以下のサイトをごらん下さいね。
「八ッ場ダム工事事務所」 | 八ッ場ダム工事主体側のサイト。 |
「八ッ場ダムを考える会」 | 八ッ場ダム計画の見直しを訴えるサイト。 |
ちなみに現段階での(部外者としての)Takemaの意識としては「無駄かもしれないけれど、地域そのものの(残された)つながりを維持するためにはやむを得ないのかな?」という感じです。7月にうろうろしなければ大分反対寄りだったんでしょうけれどね。
話が温泉めぐりから大きくそれましたが、前提説明としては必須でしたのでお許し下さい。で、その「林温泉」のことを思い出すと同時に、
(ちなみに林温泉に関するページはこちら。「漣温泉」の次に出てきます)
ということを思い出したわけです。というわけでまずは川原湯温泉を目指します。
川原湯温泉も、まだサイトを開設する何年も前に入ったのが最初で最後でしたからもう10年くらい来ていなかったのかなぁ。で、その時は王湯に入ったので今回は笹湯にすることに。聖天の湯は何だか混んでいそうだったのでパスしたのですが、せめて見に行ってもよかったのかな。
ちなみに沿道にある案内板にはなぜか笹湯の場所が消されていて、「もしや地元専用湯に?」と一瞬不安がよぎりました。しかし地元の人にお聞きすると「大丈夫だよ、その角を下ったところ」とおっしゃって下さり、よかったぁ。
というわけで笹湯へ。うむ、風情ある共同湯という感じでなかなかです。湯小屋の前にひさしが伸びていて、その下に椅子が置かれているというのはこの界隈の基本設計なのでしょう。林温泉もそうだったし、このあと巡った各湯もみな同じ造りでした(というか、笹湯の造りをお手本にしたということかも)。
湯小屋に入ると正面にまず料金箱があるというのは当然ですが(無人湯ですし)、その壁の裏側がいきなり湯船になっているとは思っていませんでした。靴を脱いでさて脱衣場にと思ったらいきなりお風呂だもんね。で、男女別のお風呂に先客さんはなし。よし、貸し切りとは幸先いいぞぉ!
換気がいい造りということもあって湯小屋の中は湿気が籠もっていることもなく、11月ならではのひんやり感がよろしいです。で、お湯はまさに適温(ちなみに女湯はちょっとぬるめだったそうです)。ちなみにしばらく誰も入っていなかったらしく、脱衣場に置かれた足ふきタオルも洗い場のタイルも完全に乾いていました。
源泉はまさに無色透明ですが、仄かにアブラ臭がしていました。林温泉ならともかく、ここの湯でアブラ臭を感知するとは思ってもいませんでしたからちょっとびっくり。王湯の記憶にこの臭いはなかったよなぁ。日によっても違うんでしょうけれど。
本日最初の湯ゆえじっくり堪能して上がりましたが、やはり長い間地域の共同湯として利用されていただけあってかなりいい風情を楽しむことが出来ました。
しかしその一方でこの浴場の周りには、すでに壊されて土台のコンクリ部分だけが残された敷地を多く見たのも事実です。以前はもっともっと活気に溢れた湯だったんだろうな。そしてこれから先何年間ここ笹湯があり続けるのかもわからないわけですから、やはり浴後感には複雑なものがありました。
さて続いては、この八ッ場ダム建設に基づき、地域住民の福利厚生を目的にして建設された「新しく、かつ期間限定の」共同浴場を目指します。
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