− その5 真夏の愛子岳、試練の登山(1) −

翌朝5:30ころ、静かに宿を出ようとしましたが既にJUNさんが「ハイ、これお弁当」と、全日予約しておいた登山弁当を手渡してくれました。うわーこんな早起きをさせて申し訳ないと思いましたが、よく考えたら縄文杉に登る人の多くはもっと早く出発しているはずですからこの時間は慣れっこなんですよね。というか出発が遅いですねわれわれは(笑)。

冷蔵庫で冷やしておいたペットボトル(JUNさんのお母さん、自宅用の冷蔵庫を使わせていただきありがとうございます!)もピックアップしました!すでに気温は25℃くらいある感じだし、この冷たいペットボトル軍団(登山用ポリタン1.5リットル、お茶のボトル2リットル、そしてコーラの空きボトル0.5リットルは冷凍庫で完全に凍らせておきました)、合わせて4リットルに、登山口に行く途中で買った0.5リットルのお茶ボトルと合わせて4.5リットルが、夏の愛子岳に登るための全液体量なのであります。

ちなみに縄文杉に行く場合などは途中に小沢がたくさん流れ込んでいますから水はどこででも補給できるようなものですが、本日これから登ろうとしている愛子岳は途中に水場と名が付く場所はあるものの、たぶん今回は涸れていることが想像されます。ということは2人分で4.5リットルで足りるのでしょうか?2006年利尻岳登山のことが思い出されないでもないですが、まぁとにかくこれで行ってみることにしました!



というわけで、すでに蒸し暑いぞモードの中これからスタートです!

手前の駐車スペース(5台くらいは止められる)から上画像の看板まではほんの15mくらいなのですが、ここからは上方に延びる林道ではなく、看板と林道の間から始まる登山道を上っていきます(よく見ると道があるのがわかるでしょ?)。

で、最初のあたりこそ傾斜が緩やかでしたが、徐々に尾根の傾斜がきつくなってきます。ちなみに縄文杉に行く場合の荒川登山口の標高は約600m、そして「ゴール」の縄文杉は約1300mというわけで標高差は700mなのですが、これから登りはじめる愛子岳はといえば登山口の標高が170mくらい、そして頂上は1235mですから標高差は1000mオーバー、しかもここでものすごく大切なことは、

登山口にて最後の準備をしている段階で、すでに噴き出してくる汗‥何だかいやな予感がしました。そしてその予感はたっぷり現実に反映されたのでありました!ちなみにこの年の夏は屋久島在住の方々も「今年は(8月末になっても)暑い」と口をそろえる天気であり、しかもあるガイドブックによれば「愛子岳=夏に登る山ではない」と書かれているのだとか。それを知りながらあえてチャレンジしようとしているわれわれはよほどの酔狂者?(笑)。

というわけで6:30ころ出発です。道はしっかり踏まれていて迷うことはないですが、5分も歩けばもう汗びっしょり。あれー自分ってこんなに汗かきだったかな?と何だか変に思うほどです。で、Takemaの大切な登山アイテムを忘れたことに気づいて愕然としました。それは‥

えーっと、何を言いたいのかわからない人続出ですね(汗)。ちなみに類例として「その手は桑名の焼き蛤」とか「恐れ入谷の鬼子母神」とか、最近では「そうはい神崎!」なんてのもありましたが(苦笑)、いわゆる語呂合わせってやつです。「忘れてきてしもうた=下総(しもうさ)」+「下総中山には日蓮宗屈指の古刹である法華経寺がある」というのを引っかけたんですが‥グローバルなネット上で、総武線沿線在住の人しかわからないギャグをかますのは反則でしたね、失礼しましたm(_ _)m。

いやそんなことはどうでもいいんでした、ウチワの話です。実はTakemaの夏山行きに欠かせない「武器」なんです。Takemaは特に汗かきというわけではないのですが、身体を冷やさないとへばるんですね。特に大縦走の初日など、まだ身体が山慣れしていないうちは暑さをしのぐため常にウチワを手に持って登るのを習慣にしてきたわけです。しかしその「武器」がないとすると‥手であおぐか、いやそんなの意味ないですって。しかも‥。

屋久島の低山照葉樹林帯に続く道には全く風などありません。しかもよせばいいのに木の間越しに太陽が朝から元気に「さーって、今日も暑くするからねーっ!」と朝一番から強い日射しを照射してきます。そして何より、しばらく山から遠ざかっていた身にはこの急登がキツイ!というわけで、標高差にして500mほど登ったあたりから「胸の鼓動がドキドキ目先はクラクラ負けそう負けそう♪」という感じになってきました(この曲も阿久悠さんの作詞だったんですね。え、何のことだか?という人はこちらへ)。さらに汗をぬぐっている温泉タオルは絞ると汗の水分が「ぽたぽた」ではなく「ジャーッ」と流れ落ちるような状況でしした。当然グロッキー気味で登るペースも落ちざるを得ません。



なぜだか余裕のおしんこどんとヘロヘロモードのTakema。「しるべの木」は標高約900m弱の地点なので、もう700mくらいは登ってきたところ。

そんなTakemaを、おしんこどんは「最近全然運動していないし、お腹のあたりも豊満になりつつあるからねー」とTakemaの体力低下のせいにしようとします。そしてさらに、

という新たな呼称を思いついて一人悦に入っておりました。いや、運動してないのは否定できないけれど、この日のバテバテはいわゆる熱中症ちょい手前の状況だったんだからさー!‥って、これを読んでいる人も信じてないって?(大笑)。

さてさて、バテの原因追及はともかくとして、そんな状況であれば必然的に水分摂取量は増加します。いやー、唯一の幸せはやっぱり凍らせておいたボトルの「冷たぁい水」を飲むときでしたね。それ以外の水も冷蔵庫に入れてあったのでまだまだひんやりなので、水を飲む瞬間だけは幸せ一杯夢一杯モードなのでありました。しかしこの消費ペースでいくと?(暗雲)。

ところで話は変わりますが、登山道沿いには高低差100mおきに標高を示す看板とそのエリアの植生を示した看板(こちらは200mおき)が立てられています。自分は登山口にて時計付属の高度計を補正し、最初の頃はまさにほぼ看板通りの標高を示していた訳なんですが、なぜだか1000mあたりからは突然数値が合わなくなりました(右上画像)。もちろん高度計は気圧を基準にして標高を表示しているのですから、気圧の急激な変化があればもちろん表示も高く(低く)なるわけではありますが、そういうときは大きく天気も変化するはず。途中ガスは出たとはいえ大きな天気の変化はありませんでしたし、頂上では再び正しい高度を表示したし、もしかしたら看板の位置が違うのかしらん?

さて、1000mを越えたあたりからしばらくは尾根近くを歩くようになり傾斜はがくんと緩くなります。そして標高が上がり、ガスが出てきてくれた(直射日光をさえぎる)おかげでおかげで気温そのものも下がったようです。というわけでやや復活したTakemaでありました!そして「とまりの木」(何でこんなありふれた感じの木に名前が付いているのかわかりませんが)あたりでようやく頂上部も見えてきましたし!(えらく急傾斜なのが気に掛かりましたが)。



ヤラセではなくだいぶ復活したTakema。いやまだ普段通りではありませんでしたが。「とまりの木」、看板がなければ誰も気づかないぞ(笑)。

もっとも頂上の基部までたどり着いてからの最後がキツイのがこの愛子岳。それまでのトラバース道とは全く違う急斜度の直登路が待っているのであります。疲れてきた身体にこれは応えるのであります。モッチョム岳登山の時も感じましたが、屋久島の前山ってあまりジグザグのルート取りをすることがないんですよね。時にはやや強引に直登する場合もあったりするわけで、そりゃ一気に高度は稼げるけれど、その急登を目にしたときの精神衛生はかなり良くないぞ(笑)。

樹林帯の中でもこの傾斜、何なんだーっ!と思いつつも、ロープ(計4本)が出てくればもう頂上までは近いのですから頑張って‥と、いきなり森林限界を抜けたような感じの広場に出ました。もちろん本当の限界点標高はもっともっとはるかに上なのですが、ここからは岩場になるのと、それゆえここから上部は吹きっさらしになるので樹木の生育に適さないからなのでしょう、まるで北アルプスなどの高山に来ている気分にさせられます。

上の画像を見るとガスっていますが、このガスはごく薄く乾いたもので、時折さぁっと視界が開けてはるか下方の海岸まで一気に見渡せたりします。頂上からの展望もこれなら期待できるかも?というわけでやや長い休憩のあと、いよいよ最後の1ピッチと相成ります!
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