− その8 蔵王温泉「かわらや」さんにて復活した足元自噴湯を宿泊堪能 −



そんなわけでやってきた蔵王温泉。今宵のお宿はこちらでございます。

こちらのお宿をご存じない方は「へー、新しそうだけれど小さな宿なんだ」という感じでしょう。そしてある程度詳しい方は屋号をご覧になって「え、ここって今は日帰り専用なのでは?」といぶかしがられるかも知れません。



だって幟にも「日帰り温泉」、宿の正面にもしっかり「日帰り入浴」と書かれていますしね。

詳しい方ならご存じのはずでしょうが、実はこちらのかわらやさん(正確には「川原屋旅館」さん?)は、もともとこの場所にあった旅館施設が2010年3月に火事で全焼。棟続きの「足元自噴湯浴場」のみを残し灰燼に帰してしまったのです(原因は温泉ガスを因とする電気系統のショート?)。すぐ脇にある川原湯の共同湯も無事ではありましたが、この火事は多くの数少ない「足元自噴湯ファン」を嘆かせたことでしょう(え?日本語がオカシイって?)。

しかしここからの復活が早かった!火事で焼けてしまった建物を全て取り壊したのはもちろんのこと、延焼を免れた宿の湯小屋も含め全面的に建て替えて「新装かわらや」として再オープンしたのが2011年の5月。何と火事から再オープンまで1年と2ヶ月しか経っていません!いくつもの蔵王の温泉宿が休廃業に追い込まれつつある昨今(後述)としてはとてつもないスピードでの復活なのであります!

そんな心意気に温泉ファンなら是非入浴を乞いたくなるのは当然のことですが、営業規模をぐっと小さくしたため基本的には「日帰り入浴」での営業スタイルです。週末にはお湯の良さを求める温泉ファンがそれこそひっきりなしにやって来ます。だってTakema自身も2011年の7月に入浴していますから!(その時の模様はこちらから)。でもですね。わたくしTakemaは今回の旅行計画時にこちらの公式サイトでとある記載を見つけてしまったのですよ。それは‥
誤植があるようですが気になさらぬよう。
いやぁ、もう速攻で電話しました。すると当日4/29(日)は宿泊OKとのこと。でも食事については一切書かれていないので「あのぉ、夕朝食についてはどうなのでしょうか。素泊まりのみでしょうか?」とお聞きすると、思いもかけないお返事をいただきました!

たった2部屋ということは言い換えれば「1日2組限定の宿」ですよね(笑)。しかも日帰りでも「創作和食膳」を提供しているということは、間違っても「ケータリング系の料理をそのままお皿や小鉢に並べてバンバン」ではないはずです。そしてですね、もし万が一‥

とはいえさすがに予約時には、「貸し切りじゃなくても全然問題はないのだ」と冷静に状況を予測しました。そもそも貸し切りじゃなくても、「8時間耐久レース」とかじゃあるまいし、ほとんどの時間は自分もお相手も入浴していないわけですからまず間違いなく湯は貸し切りのはずなんです(笑)。

そんなわけで16:30頃にお宿到着。玄関を入ると靴箱には10足以上の先客さんの靴が並んでおり、GWとはいえ人気のほどがうかがえます。すぐ下の川原湯共同湯もそれこそひっきりなしに人が出入りしていましたし。

そんなわけでチェックインです。もちろん予約してあるので流れはスムーズだったのですが、この一言にさっそく期待が高まりました(笑)。

ん?それってどういうこと?もしかしてアレがアレだからナニして下さいってことなのかな?(意味不明)。えっと、結論から申し上げますと「この日の宿泊はわれわれ3名だけ」でありました!まさかGW前半の3連休の中日にお宿を貸し切り利用できちゃったとは驚きです。でも「宿泊は要問い合わせ」ということはいつでも(飛び込みでも)泊まれるというわけではないのでしょうから、宿泊希望の場合はとにかく早めに予約するのが大吉だと思われます。

さて、お風呂が混んでいるというのでちょっとビールの買い出しがてら散歩に行ってきました。

まずはお宿のすぐ右下にある川原湯共同湯の画像をパチリ。ホントに延焼しないでよかったですねぇ。消火までには6時間もかかったそうですが、おそらくこの共同湯の建物にも「延焼しないように」たっぷりと水が掛けられたことでしょう(消火用水が足らず温泉水をも利用したとの情報もあります。蔵王温泉ならではですねぇ)。

さて、この共同湯の裏手にあるのがかわらや旅館さんの湯小屋です(右上画像)。こちらの湯小屋も延焼を免れましたが、母屋の新築に合わせて完全に新しく建て替えられたのでピカピカです。内部の画像はあとでということで(何たって貸し切りなので撮り放題でしたし(笑))。

さてここまでは良かったのですが、このあとはちょっと悲しく切ないお話になってきます。実は2009年のGWにはすぐ近くの(建物の端までなら歩いて1分)「なかむらや旅館」さんに宿泊したのですが、今回見てみたら休業していました(建物の一部には崩壊が始まっていたので「廃業」だと思います)。そしてかわらやさんの周辺から目視するだけで数戸の建物が同様に「崩壊」し始めていました。

そして「GWだというのに」シャッターを閉じた建物群(右上画像)。左上画像の上湯共同浴場では湯上がりにくつろぐ浴衣姿のカップルが写っていますが、この方々が見ている方向には間違いなく右上画像のシャッター街があるはずなのです。

優に1000年以上の歴史を誇る蔵王温泉郷。しかしその歴史の分だけ権利とか既得権とかが複雑化したのはいうまでもないことです。戦前はまだ湯治メインゆえ大らかなものであったのでしょうが(商業規模も小さかったでしょうし)、戦後の経済成長からバブルに至るまでの間にそれらの権利は絶対化し神聖化され、それこそ「湯を引くパイプ1本にとてつもない額」が必要となった時期もあったと思われます(わたしは完全に部外者なのであくまで推量の域であることをご理解下さい)。

しかし、バブルがはじけ団体旅行もはじけ、さらにはスキーも旅行も若年世代が需要を引き継がない現在においては、かつての営業形態にこだわる全国各地の温泉地がボロボロになっています。そしてまさにここ蔵王もその典型のように思われます。はっきり言ってしまえば、

だって、くつろぎに来たはずの温泉宿の窓から半ば崩壊した建物が見えていて、それを見ながら「安らいでくださいリフレッシュしてください」なんてあり得ないですよ(本音)。

おそらくこれまで数十年ものあいだ「恵まれすぎていた」蔵王温泉。上にも書いたように権利云々は絡みまくっていると思うのですが、そろそろ「衆議一決」なんて夢物語は捨て去って、温泉街全体をある種「力ずくでリニューアルしていく」時期がやってきているのではないでしょうか。少なくとも、崩壊しつつある建物を放置しながら『でもウチにも権利はある』と豪語して止まない輩がいるならば「あの建物を片付けてから権利とやらを言え!」と言える外からのトップ&最終的な決定権限を委託された最大2人の地元代表者が必要なんじゃないですか?「仲良し倶楽部」じゃどんどん縮小するばかりですから

しつこいようですがTakemaは個人的に蔵王温泉と一切の直接的パイプがない人間です。でもだからこそ言わせて下さい。「現状の蔵王温泉街は観光地として瀕死の状態なのに、そのまま安楽死に向かうままでいいのですか?今はまだ何とかなってはいても、10年後は大規模施設以外は見向きもされなくなりますよ」と。

現地の方々の代々にわたる深いつながりやお互いへの気遣いがあることはわかっているつもりです(というかその連環なしにこれまでの蔵王温泉はなかったはず)。でも今はそのことによるデメリットが観光客に目に見える形で映っているのが今の蔵王温泉の温泉街であるように思われます。だからこそ次のステップに一刻も早く踏み出してほしいのです。

お土産屋さんも同じです。旧態依然のおみやげ屋では、各地を旅行して目が肥えたお客の目に留まるものなどありません。「○○に行ってきました」なんてタイトルの菓子折を堂々と陳列している状況ではないのです。地元山形以外で製造された「東北っぽいパック系食品」もそうです。そんなものは高速道路のSAPAに任せておけばヨロシイ。蔵王温泉のおみやげ屋さんに入店する人が(以下は例ですが)千葉県で製造されたおみやげ品を買おうと思っているはずはないのです。その点、特に食品については間違いありません。

うはー、エラソに語ってしまいました(汗)。でも自分の中の蔵王温泉に対する印象は隠すことなく書いたつもりですし、間違いなく自分はこれからも蔵王に行き続けたい人間なので、「あらたにバブらなくても大手支配系に陥らなくてもいいから、蔵王は蔵王らしく」であってほしいのです。だからこそかわらやさんの新たな営業スタンスによる復活が嬉しかったんです。これはうそ偽りなく本当の思いでありました。

さてそんなわけでお散歩の話を続けましょう(そういやお散歩の話だったのね=自分でもビックリ)。

さて下湯の共同湯までやって来ました。画像ではどなたの姿も写っていませんが、実際は男湯からも数名の笑い声が聞こえていました。たぶんこのタイミングで入浴しても1人で小さくなっているしかなかっただろうな(笑)。でもこのお散歩は、そもそも「酒屋さんに缶ビールを買いに行く」という重要なる必然性を帯びた行動であったわけです。でもまだビール買ってないし(笑)。ちなみにかわらやさん館内の自販機にはアルコール飲料は売っていなかったはずです(=もちろん食事時には頼めるんですが=あ、部屋に瓶ビールを持ってきてもらえばよかったのか!=貧乏性ゆえ思いつきもしませんでした)。

そんなわけで戻ってきたら、夕食時間近くになり入浴客のピークを完全に過ぎたかわらや旅館さんのロビーは全く無人。そんなわけでパチリ。



カウンター上の入浴券自販機は小さくて、ミニ幟とフィットしていてヨロシイです。築1年&掃除ばっちりでどこもピカピカ。

ちなみに左上画像右側の扉がわれわれの宿泊した部屋「酔月」です(Takemaにぴったりの名前ですな)。ちなみにお隣の空き部屋(「千草)」も夕朝食会場としてしっかり利用させていただきました。両室とも宿泊客がいる場合はロビーのテーブルを使うんでしょうが、この部屋食はのんびりできてよかったぞー。
さて部屋に入ってしばしのんびりしていたら(=買ってきたビールを飲み始めていたともいう)いきなり内線電話が鳴りました。あれおかしいな、確か夕食時間までにはまだしばらくあるはずだし?と思いつつ電話を取ったわけですが、その電話には心温まるお宿スタッフの思いやり発言が。

にゃるほど左様にござりますか!ではではお言葉に甘えて足元自噴湯をタンノーしちゃいましょうかね(満面の笑みを浮かべつつ)!

浴室へは階段を下っていきます。脱衣場の手前には洗面台があるのですが、ここにはコンセントがありません。というのも、温泉ガスによる電気配線の腐食等をできるだけ防ぐため、浴室回りの電気配線は照明のみの最小限にしているのだそうです。そこにはかわらやさんの徹底的な安全対策がありました(ドライヤー等はロビー横の洗面台で使うことができます。レンタルありで立ち寄り湯ライダーでもこれなら安心)。

そして脱衣後に戸を開けたその先には‥



湯面は微動だにしていないように見えていて、でも実は浴槽縁の全面から均等にオーバーフローしているという絶妙の構造。そういえば昔のエライ人もこんな言葉を残していたな、えーっと確か‥

まぁコトの真偽はともかくとして、とにかく素晴らしいのでありますよ。



浴槽縁からはじわじわと均等に源泉が流れ出ていきます。トドファンにはたまらないはずです(笑)。



なお浴室の奥には真湯利用の洗い場があります。石けんでは歯が立たない強酸性の湯ですからありがたい。

そんなわけで身体を洗ったあと浴室に戻り、再び湯に浸かるまでの動画をご覧下さい(まぁ温泉ファン以外にはどうでもいい動画ではありますが)。
「かわらや旅館の足元自噴湯タンノー中!」

湯から上がって脱衣場で着替えていた時には、ほんの数m先にある川原湯共同湯の浴室からは何人もの男女の声が聞こえていました。夕食前のこの時間に男女とも貸し切りで同じ源泉を楽しめたなんてあまりにも嬉しすぎます。ええ、「こちらのお宿を選んだ自分をほめた」ことは言うまでもありません(大笑)。

部屋に戻ってきたあとは再びリラックスタイムです。しかしこの日は暑かったですねー。一応まだ4月末なのに各地で30度を超えていたようです。ちなみに米沢界隈でも28度は超えていたようですが、さすがに蔵王は標高が高くて涼しいわ。そんなわけで時期外れの避暑にもなりました(笑)。

おしんこどん母子もお風呂から戻ってきてしばらくしたところで「ご飯の支度ができましたよ」との連絡が。ではではというわけで隣の部屋に移動してみると‥



「懐石風」だとは聞いていましたがこれほどの品数が出てくるとは思ってもみませんでした(笑)。でもですね、それぞれの量は決して多すぎず、しかもアツアツはしっかりアツアツで持ってきて下さったので大満足。もちろん少食Takemaも完食しましたが苦しさを感じるほどではありませんでした。食事付きの休憩をやっているお宿でもありますし、味の方も洗練されていてもちろんOK。うーん、次回蔵王に泊まるときも第一候補はやっぱりここだな、だって「お湯よし食事よし」ですから!



そんなわけで乾杯&完食。右上画像に一部残っているお新香もこの後もちろん食べましたよん。



そして夜の湯もタンノーしましたし(照明が明るすぎないのが嬉しい)、



朝湯だってもちろん。チェックアウト前にさらに名残湯を楽しんだことは言うまでもないことです。



ちなみに川原湯共同湯とはこんなに近い場所にあります。湯脈は完全に同じでしょうね。

そんなわけで朝食もさっぱりといただきました。宿によっては朝からミニ鍋なんかを出すところもありますが、朝から「あんまり濃い系ごはん」は嬉しくありません。こちらはそんなこともなくて安心です。



でも「おかず8品」はTakemaにはちょっと多かったですが(もちろん完食はしましたよ)。

というわけでいよいよ出発です。天気は高曇りでしたがどうやら雨の心配はなさそうな予報なので安心です。この日はまずいきなり「蔵王の山越え」から始まるのですから‥
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