さぁいよいよ「乗船」の時がやってきたわけですね。私Takemaは以前、タイのタートンからチェンライまで約4時間のスピードボートに乗った経験がありましたから、計画段階では「7時間かぁ、まぁあの時よりも随分長いけれど何とかなるだろうし、滅多に乗ることも出来ないだろうしなぁ、どうせ似たようなものだろうし、ここは乗るっきゃないなぁ」とタカをくくっていたわけです。

しかし、いざ改めて船を見てみるとそこには大きな誤算が。まずはボートが明らかに小さいのです。タイのほうは客だけで明らかに10人以上乗ってまだ多少余裕があったし、荷物置き場も大きかった。それに比べてこっちのボートは、きっちきちに詰めても操舵手を含めて9人が限界なのですよ。さらに違うのが船の幅。船体も前のほうが細くなっていることもあって、最前列は同じ横二人がけでもものすごく狭いです。座るというよりは「はまる」という言い方のほうが適切でしょう。

どんな姿勢で乗り続けるか、それをあえて例えるなら小学校の体育の時間を思い出しつつ実践してみて下さい。お尻をついて座り、膝を手で抱えて先生の説明を聞くという姿勢ってありましたよね。この姿勢のまま、膝より下の部分をぐっと胴体側に近づけてください。「え〜っ、こんなに近づけちゃうの?」というレベルではまだまだ甘いです。「もう、これ以上は寄せられないっ!」、そのちょっと手前あたりの姿勢、そう、それがこのボートの「正しい乗車姿勢」なのです。

というよりも、この姿勢以外では乗れません。それほどの狭い客席に7時間缶詰です。正直いって、背丈の高い人や体の固い人にとってはかなりの拷問といっても過言ではありません。そのためか、身体の大きい欧米人だけで乗るときは6人で定員ということのようです。しかしラオス人を始めわれわれのようなアジア人の場合は8人定員です。混成部隊の時はやっぱり8人みたいです。要は「狭いったらないのね」。

 

写真左、最後部のかなり背の小さいラオス人女性でさえ、膝が前座席の背もたれにつかえています。真ん中の白人男性は、船が止まっている今でこそ足を前に投げ出していますが、走り出したらそのままというわけにもいきません(先頭列の場合はそのままでも何とかなりますが落下の危険度が増します)。では彼はどこに足を収納するというのか?そう、前の人と自分との間のほんの僅かな隙間に強引に足を潜らせる以外にないのです。右の写真を見ても席の狭さがおわかり頂けるのではないでしょうか?

次にこの船に推進力を与える心臓、すなわちエンジンについてです。さすがアジア、何でもありというか使えそうなものは何でも使ってしまうというか、動力の源は何と乗用車用エンジンです(ちなみに見た限りはみんなトヨタのエンジン)。たぶん日本あたりの中古車エンジンを単品で輸入してくくりつけているのだと思いますが、そりゃカローラあたりでも1500ccくらいはあるわけで、それをギアもなくひたすら高回転で回していくのですからスピードは出ますわ。

参考までに、前日アンカーさんのボートでルアンから1.5hかかったタムティン洞窟までは、何と20分で着いちゃいました。25kmを20分ということは、75km/h!この細くて小さい船でそんなスピードを出していくのですから、スピードボートの名前は伊達じゃありません。

途中休憩の際にはエンジンオイルの補給が欠かせない。ということはそれなりにオイル漏れもあるということだろうか。これだけ高回転でずーっと回していれば、確かにエンジンのへたりも大きいだろうなぁ。でも、エンジンむき出しって、雨期でもこれで突っ切っているんだろうなぁ。
ただし、だからといっていいことばかりじゃありません。最大の問題は「爆音」何がないってエンジン音を外に漏らさぬための、どんな車でもバイクでも必ず装着している(暴走族の四輪お兄ちゃん達だって防音効果の薄いやつはつけてます)、あの「マフラー」がない!そこで、エンジン室から発せられた爆発音は、何らのフラストレーションを感じることもなく一気にメコン流域に向けて放たれるというわけです。



ほらぁ、エンジンから見事に「直結」そのもの。

しかし、これはまじめな話ウルサイです。自分たちの数メートル後ろでゴジラが叫び続けているとでも言えばいいんですかね、まぁ人間は慣れるという学習というか順応機能を持ってはいますが、それにしてもうるさいのはキビシイ。ボートが止まると、静寂とともに「キーン」音がずっと止まらないと思ってください。

でもこのことはと、あるHPを読んで事前に予備知識として知っていたTakema&おしんこどん。しっかりこの時のためだけに成田空港で買いこんでいたものがありました。それは言わずと知れた「耳栓」。一番安い使い捨ての安いやつでしたが、これがあるとないとは大違い。おかげで、途中の船交替に伴う席替えでエンジン直近になったときにも結構普通でいられました。いや、それなりにかなりウルサイのはあたりまえなんですけれどね。

 

さぁ、いよいよ出発です。「景色が一番いいだろう」ということで先頭座席に座ったTakemaは、その約5分後にとてつもない身体的危険に直面しました。狭い座席の中で足を抱えるようにして(いや、まさに抱えて)座っていた、その時です。

「ん?あ、やば、やばいよこれ、足がつる、つるぅぅ!(以上、声にならぬ声)」

そう、まだ勝手が分からないまま無理な姿勢でいたために、しっかりツリかけたわけです。しかし幸い先頭席だから何とかなりました。とりあえず危機一髪状態の中であたふたあたふたしながら、両足を前正面の荷物のほうに投げだし、ほっと一件落着です。でも、あれが2列目以降に座っていたらどうなっていたか、それは考えたくもありません。

しかしそうなると新たな危険が押し寄せました。それは「メコンの荒瀬」です。とうとうと流れる大河メコンにもところどころ(いや、中流域のこのあたりにはしばしば)「瀬」というような波立つ難所があります。そういうところを通り過ぎるときはもちろん船も多少スピードを落としますが(ただし「徐行」とまではいきません)、波のギャップを乗り越えるときには船がジャンプします。そうしたとき、船の側板が低い(せいぜい20cmちょい)先頭席は結構コワイのです。

しかも、両足を前に投げ出しているTakemaは、そのわずかな20cmの側板も生かせない形で腰が浮いた状態になっていますから、ギャップ(ちなみに荒瀬のみならず、中型船以上と行き合ったあとにも必ず同じような波が来ます)を乗り越える際には側板をぎゅっとつかんでやり過ごします。こんなことであと○時間、無事でいられるのだろうか‥冗談を抜きにしてまじめに考えます。

しかし、Takemaより背が低く、しかも身体の柔軟性の高いおしんこどん@高校陸上部出身は、こともあろうにすぐ脇で「寝てる」じゃないですか!あのねぇ、普通の姿勢だってアブナイと思うのに、なんでこんな状況で寝られるのさ!---しかし、これがいつものおしんこどんなのでありました---(笑)。

さて、こうやって文字で説明していても実感湧かないでしょう?というわけで、このメコンスピードボートの様子を音声付き動画で撮ってきましたので、お暇な方はみてやって下さいね。音は随分抑えられていますので、ここは是非普段の1.5倍くらいの音量でお楽しみ頂けると幸いです。それでも実際の騒音からいったら屁の河童です(ちなみに「瀬」はもっと激しいのが普通ですが、そんなところじゃカメラを向けられませんので、この動画に写っているのは結構おだやかな部類だとお考え下さい)。

「こんな道中が7時間!」
Wmv形式、1.25MB、31秒
ぜひ、こんな感じが「7時間」にわたって続くと思ってやって下さい。それでも行きたいあなたはTakemaと同類です(笑)。

さて、せっかくですからこのスピードボートを乗るにあたって参考となりそうな情報を羅列しておきます。
道中の食べ物 途中休憩のパクベン以外では食料や飲み物の買い出しが出来ないので、
あらかじめ(前日のうちに)準備しておくこと。ただし、迂闊にも飲み物として
冷えたビールなどを入手していた場合などは、時速80kmのボートの上で
「ト、ト、トイレぇ〜っ!」と叫ぶことにもなりかねないので避けたほうが無難。
(以前タイのスピードボートでやりかけた私です(爆))
なお、飲食物は必ず手荷物のほうに入れておかないと取り出せません。
ルアンパバーンの
ボート乗り場
スピードボート乗り場は市外から離れているのでトゥクトゥクや船などで
行かなければならないが、念のため7:30頃に着いていると安心できる
(ただしそれ以上前に着く必要はない)。万が一人数が少ない場合、
「端数」になってしまった人たちはもう一日待つか、または不足分の代金を
人数で割って負担するしかなくなるわけですね。
乗船時の服装 船の上は、特に朝方はかなり寒いです。ウィンドブレーカーなどがあると
いいです。また、場所によってはしぶきがかかるので(しかもよけられない)、
おしんこどん@妻は防寒も兼ねて雨具の上下を着込んでいました。雨期などは
下も着ないと水浸しになってキツイでしょうね。
あると便利なもの 耳栓。乗用車のエンジンで推進力を得るこのボートですが、残念ながら
マフラーというものがついていません。従ってものすごい爆音。特に最後列は
すごいです。うちらは成田の空港で使い捨てのを買いましたが重宝しました。

また尻&背中イタタの緩衝剤として、座布団 or 背もたれのかわりになるものが
あるといいです。座布団マットはありますが、背中は板なので痛いです。
席取りのポイント 客席は2人がけ×4列ありますが、前に行くほど席の幅が狭いです。ただし、
先頭席は勇気さえあれば足を最前列の荷物席に投げ出すことも出来ます。
でも船がバウンドするときには真剣につかまっていないと、下手すればメコンの
藻屑になる危険もあるのでおすすめは出来ません。
最後列は先頭席に比べて1.3倍くらいの幅があるので横は多少融通が利きます
が(「広い」という形容を使うほどではありません)、そのかわりエンジンがほんの
1mくらい後ろに接近していますから、爆音は一番ひどいです。さぁ、あなたは
どの席を取る?

なお、あたりまえですが席はその時の乗る順番に
よって決まります。何番目に乗るように身を置くか、その時のさりげない作戦が
その後数時間の自分の苦痛を左右することをお忘れないように。
安全装備 こんな所まで来てこんなボートに乗ろうとする人なら、乗船に関して「保険」などは
なく、あくまで自己責任の問題だということは重々承知ですよね。
ちなみに乗船の際にヘルメットとライフジャケットが配られます(足らないこともあり)。
ただし着用するかしないかは各人の裁量によって違います(強制されることは
ありません)。ちなみにヘルメットが臭いという情報をどこかで聞いたことがあり
ますが、それこそ当たりはずれの世界ですね。それよりも、あそこで貸し出される
ヘルメットの強度のほうが不安です。結構粗悪です。いざというときはメットだけ
飛んでいくだろうなという印象でしたので、後半はかぶるのやめてました。
川沿いの景色 これがもうちょっと変化に富んでいたらもう少し退屈も紛れるのだろうなという気が
します。ほとんど人の気配がないんです。まぁこれは「自然豊かなメコン」を満喫
出来るという意味ではプラスでもあるんですけれどね。
さて、続いては道中の出来事についてお伝えいたしますのだ。