− その3 Lake Piunde Hut(3550m) -- Mt. Wilhelm Summit(4509m) -- Hut -- Betty's Lodge(2750m) −

昨夜はなかなか寝付かれぬまま、「ガイド達のグループ(オーストリア人のガイドを含む)、随分遅くまでわいわいやってるなぁ」と思いながら横になっていたのですが、ん?気がつけば所定の時間(23:30)になってるぞ。しかも、隣の部屋のオーストリア人夫婦も起きてる気配はないし、どうしたのかなぁと思いつつ、さっさと寝袋から出ても寒いだけなのでしばらくサナギ状態を続けていたTakemaなのでありました。しかし今日の行程を考えればそういつまでもゴロゴロしているわけにもいかないし、いい加減トイレにも行きたくなっていたので(トイレは小屋から離れた所にあったので、嵐の夜中に行くのははばかられたんですね)、勇気を振り絞って「集団寝坊シンドローム」から抜け出しました。時間は0:00ジャストころ。

靴を履いていると、そういえば屋根に雨があたる音がしないことに気がつきました。ほほぉ、雨、やんだのね。ま、雨さえ降っていなければ何とか上までと思いつつ小屋のドアを開け、外に出てみると‥

「よっしゃ、星が出てる!」

満天の星空とはいきませんが、それでも天空の半分くらいは星空で、天の川もばっちり(サザンクロスは見つからなかったけど)。とりあえず天気のほうはなんとかなりそう‥でした(含みのある表現ですな)。

そのうちガイド組も起き出してきて朝食の準備をしてくれます(うっはぁ、楽だなぁ)。朝のメニューにゆで卵があったのですが、どこかで「ゆで卵は高山病の症状を悪化させるので高所では控えた方がいい」などという文を読んだ記憶がありましたので(ガセネタだったかもしれませんが)、「こ、これはどうしたものだろう‥」と悩みましたが、とりあえずその時の症状は多少後頭部に鈍痛を感じるくらいだったし(それでも昨日よりは痛みが増していましたが)、食欲は問題なくあったので、「え〜い、食べちゃえ」と平らげました。

出発は1:30。当然見事に真っ暗な中での行動開始です。最初は自分たちが先頭を行っていましたが、Lake Aundeを越えて少し行った所でオーストリアパーティに抜かれました。そして、追いつくことは全くなかったのです。彼ら、体力あるなぁ。昨日もうちらが3:20かけて登ったところを2:30で踏破してきたものなぁ。完敗です(笑)。

暗闇の中の行動だから、夜間行軍の写真はほとんど撮ってません。標高4000m付近にて。まだ元気。

さて、このWt.Wilhelm山の登山ルートですが、ある際だった特徴があります。それは、4100-4200mくらいまでは結構さっさと上がるのだが、いかんせんそこからがはなはだ長い!というものです。Lake Aundeからルートは一気に登り始め、高度はぐんぐんと高くなります。「お、もう富士山を越えたぞ」「よっしゃ、手持ちの高度計では4000を越えたぞ、あと500mだ!」という感じで、苦しいながらに気分はハイになってくるのですが、実はそこからが長いんです。4200くらいから先、登山ルートは山肌を巻き始めます。しかも上ったり下ったりのいやぁなタイプです。「遙か暗闇の彼方に見える明るい場所、あれはMadanにある製糖工場の灯りですよ」とガイドされても、心の中では「それはどうでもいいから、あとどのくらいで頂上に着くのか教えてよぉ」という感じでした。

そんな中、おしんこどんの足取りが鈍りはじめます。ローカルガイドのスティーブさんが心配し、「いよいよキツくなってきたら必ず言ってくれ、私が彼女を連れて降りるから」と話してくれました。しかし、彼女はへばっているわけではありませんでした。要は、「この高度なのにそのペース、早すぎ!」というだけだったのです(笑)。ガイドの二人に「彼女は大丈夫、もともと3000mレベルの山々を何日もかけて縦走する体力もあるし、今現在高山病の症状がひどいわけでもないと言っている。とりあえず、もう少しゆっくりリードして下さいな」ということで一件落着ということになりました。

実は、しんどいのはうちら夫婦だけではなかったようです。彼らガイド達も昨日はおそくまでワイワイやっていた関係で実質的な睡眠時間は2時間くらいだったとか。山岳ガイドのモンドさんが休憩ごとに目をつぶっていたのも、「寝ていた」のでしょう。そしてさらに(後述)。

ようやくあたりがぼんやり明るくなってきた頃、意を決して山岳ガイドのモンドさんに尋ねます。「あとどれくらいで着くでしょうね?」この時の標高は4250mくらいですから、順調に高度を稼ぐことが出来ればせいぜい1hくらいのはずなのですが、彼の返事にビックリ。

「あと3-4時間というところでしょう」

この言葉には泣かされました。うちらのペースが遅いのはもちろんですが、それよりもまだまだ山腹のトラバースが延々と続くんだということがはっきりとしたわけで、根性をしおたれさせるには十分なインパクトを持ったことばだったのです。はぁしんど。

アクシデントは続きます。4300m付近でローカルガイドのスティーブさんが「ダメだ、もうこれ以上は登れない」ということでリタイアを表明。確かに彼は山岳ガイドではないのですが、それでも「今回頂上に登れば9回目だ」と話していましたから、それなりにこの山には慣れていたはずなのにリタイアとは残念なことです(これは絶対に前述の寝不足がこたえているはずですな)。というわけでここからは山岳ガイドのモンドさんと3人で上を目指すことになりました。あたりは一面のガス、展望なし。

ルートが少しずつ険しさを増してきた頃、突然モンドさんが「あと15分で頂上(の基部)に着きますよ」と言ってくれた時には驚きました。さっきの3-4hという残りコースタイムが頭に入っていたので「今は何も考えずただ登るのみ、忍耐の時期だな」と思い続けていましたから、こりゃぁ嬉しかった!先行のオーストリア人夫婦が降りてくるのに出会ったのもちょうどその頃でした。

濡れた岩をへずったりしながら進み、ようやくガスの向こうに一段高い岩山が見えてきました!頂上を示す看板もうっすら見えています!いよいよラストピッチという所まで来ました!というわけで、まずは岩陰でいったん休憩。なぜここで休憩かといえば、頂上へ向かうルートはこの直下部で尾根を越えて反対側に回り込むわけですが、その反対側はすんごい風&ガス!しかも、ガスだけじゃない、よく見ると横なぐりの中に雪まで混じっているじゃありませんか!



強風に吹き飛ばされなかった雪はこんなふうに残ってます。

「うわぁ、南国パプアニューギニアで雪だぁ」なんてメルヘンチックな状況じゃありません。風と雪だけじゃなくて雨(みぞれ)も混じってますから、身体はどんどん冷やされます。というわけで、まずは風当たりのない場所で最後の休憩をとったわけですね。

実はこの時点でのTakemaは、それなりに高山病の症状が進んでいました。横を向いたりするとくらくらしそうなのでできるだけ真正面を向くようにしたりしていたのですが、でも比較が出来るというのはありがたいもの、「2001年のキナバル山(4095m)よりはだいぶましだな」と思えていましたから、余裕をかましてここでタバコなんぞを吸ったりしていたわけですね。

そして、ここからは岩登りのエリア。濡れた手に風と雪が追い打ちをかけ、手の感覚はほとんどなし。この山に登る時の装備として手袋は必携!というようによく書いてありますが、皆さん、防水防風モノじゃないと意味はないですよ、念のため。え、Takemaはどうだったのかって?すいません、手袋そのものを持参せず、素手で登ってました(笑)。でも、冷たかったなぁ。

さ、その登りも長くは続かず、いよいよ7:55、4509m、Mt.Wilhelm頂上に到着しましたぁ!

え、ガスで何も見えないじゃないかって?そんなの気にしない!とりあえず、うちら夫婦の最高到達標高、これにて更新!

毎度おなじみ動画編

ようやく4509mの頂上に着いたうちら夫婦それぞれのおたけびです(汗)。

「Mt.Wilhelm 山頂にて内輪ウケの一騒動」

必死に何かを叫ぶおしんこどん&無意味に踊るTakema。
Wmv形式、579KB、14秒
しかしこれで「全て終わったぁ、燃え尽きるほど頑張ったねぇ」とはいかないのが、この山のおそるべき現実なのです。登りで6.5時間かけて1000mを登り、ここ4509mまで到達した我々ですが、今宵のお宿は2750m弱、うっはぁ、今度は約1800mも下らなきゃ!

そして、このあとおしんこどんにおそるべきトラブルが?

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