− その1 まずは福島第一原発直近まで北上&南下して鉱泉宿界隈へ −



常磐道現在最北端の広野ICは第一原発から直線距離で20.8km、本線には頑丈ゲートと電光表示が(マウスオンで拡大)。

(2011年6月13&15日 その1)

3.11の忌まわしき東日本大震災、そしてそれに伴う悪夢の福島第一原発爆発事故。原発科学の分野では「想定外だった」というという言葉がタブーとなりつつありますが(非科学そのものでしょ)、「原発神話」はわれわれ日本人、そしてさらに原発周辺地域に住まわれていた方々にとっても長年刷り込まれていた「ある種の絶対信仰」であっただけにまさに心的には「想定外」であり、周辺地域にお住まいだった方々の「昨日までの普通の生活」が(今に至るまでそしてこれからも)物理的精神的の両面において「過去の引き出し」にいきなりしまい込まされてしまったことへの精神的衝撃はいかほどのものでしょう。

もちろんこのことは福島に限ることなく津波による被災地域全体にお住まいの方々にもいえることです。でもTakemaとしては‥


だから行くのです。このページを読んで下さる方々に「福島を気にかけていただく」ためにも。!

この週はいろいろあって土日は出勤、その代わり月&水曜日が休みだったTakema。ならばそれぞれ日帰りで福島にお出かけすることに。ちなみに放射線量云々とは関係なく両日ともTakemaの単独行動となりました。おしんこどんは平日なので出勤ね。

そのおしんこどんを職場まで送迎したあとは三郷ICから常磐道をどんどん北上します。常磐道も那珂や日立南太田あたりの凸凹がずいぶん補修されましたね(しかし元通りとはいえませんが)。

まだまだ各所で補修工事が続いていますが、いわきJCTから先の新しい区間ではほとんど補修の跡もなしで快調に走れます。やはり開通年度が新しいと道路設計もしっかりしていたのかな、いや、盛り土部分があまりなかったからかも知れませんが。

その一方でいわき中央ICからさらに北上すると、いわゆる「一般車両」の姿がほとんどなくなりました。対向車でも見受けられるのはいわゆる工事用車両、そして「観光バス」ばかり。そしてこの観光バスが‥

もちろん広野ICまではバイクも含め一般車両の通行制限は一切ないわけですが、何だか「前線地帯に近づいてきたな」という印象は強くなってきました。そしてその印象はこのあとさらに視覚的にも強くなっていったのです。

広野ICの手前、最後のトイレ休憩をとろうと四倉PAへ。広い駐車場を持つPAなのですがほとんど車はなく、それでもPA管理の委託職員の方が「ほぼなきに等しい」ゴミを拾っておられました。ちなみにこの下り線はトイレのみの無人PAなのですが、上りのPAには海鮮系の食堂「よつくら亭」(「食べログ」サイトが開きます)があるんです(下りPAからも徒歩で移動可能=4分らしい)。こんな時だし閉店しているんだろうなと思っていましたが、本線越しに見てみると灯りが点いているし‥頑張って営業しているんでしょう。実はまだ訪問したことはないんですが、たとえ地魚が上がらなくても是非とも頑張ってほしい「気になるお店」なのです。

さて話を下り線のPAに戻しましょう。ピンク色のハナミズキを眺めながらしばしのんびりしていたら次の車がPAに入ってきました。ん?「ほくでん」って書いてあるけれどもしかして?予想通り車から降りてきたお2人の服の背中には「北海道電力 災害支援」とか何とか書かれていました。

さらにのんびりしていたら1台の自衛隊車両が入ってきて、Takema車のすぐ隣のブースに停車。迷彩服のお2人が出てきてお手洗いに。戻ってきて携帯をチェックなさっているまではごく普通なのですが(しかしTakemaもよく観察してるな)、そのあと後部座席から何かを取り出したようでした。そしてそれは‥




(右上画像マウスオンで着用後の画像に変わります)

いやあ何だかこうなったら話しかけずにはおられないTakemaです(笑)。着替え終わった自衛隊員さんに「その防護服を着るととても暑いそうですね」と声をお掛けすると‥

やはり自衛隊の方々は素晴らしい!私が声をかけた方は見た感じ30歳代半ばとお見受けしましたが、この方々のご尽力により今も何とか原発が最悪の事態に進むことが食い止められているのだと思うと有り難くて仕方がありません。「よろしく御願いします!」としか言えませんでしたが‥。

ちなみにお2人は千葉の習志野駐屯地から派遣されて来たということで、「わたしも市川から来たんですよ」と申し上げるとすかさずTakema車のナンバーを見て「おお、確かに習志野ナンバーですね」と微笑んでくださいました。原発の終息作業に関わっておられる各方面の皆さま、福島第一原発をどうかよろしく御願いいたします!

そんなわけで再び出発、現在の終点である広野ICを目指します。



常磐富岡ICまで再開通することはもはやあるのでしょうか‥。ページトップ画像の通りこの先は立入禁止エリアです。

高速を降りてR6との交差点へ。左折方向(北上方面)は通行止め、直進するとすぐ先には現在の原発復旧作業の前線基地となっている「Jヴィレッジ」となり、そちらからは多くの大型車両や例の「観光バス」がどんどん出てきています。一方でいわゆる「普通車」はほとんど見受けられません。うーん、やっぱり最前線基地なのだなぁ。

しかし交差点を右折して進路を南方に取ると、ここ広野町の「実態」がわかってきました。

R6に入ってすぐ右側にコンビニの看板が。ファミリーマートだったかと思いますが「まずは飲み物でも買おうかな」と思ってウィンカーを出し曲がろうとしたところで(このあたりの交通量は極少)ハタと気付きました。

そうしてよく見ると、沿道の家々にも生活感がなく窓にもカーテンが掛けられており、中には不届き者の侵入を防ぐべく玄関や窓に板を打ち付けてある家もありました。ここ広野町は原発事故直後その多くが「屋内待避地域」に指定され(全域かどうかは確認していません)、多くの方々が「自主避難」を余儀なくされつつ今に至る町なのです。田畑にも春の気配はなく放置されたまま。この時期なのにネギボウズがずらっと並んだ姿に「ああ、ホントに今は誰も手を入れていないんだ」と実感した次第です。

このあとは運転休止中の広野火力発電所沿いの道を進んだのですが、高台に位置する県道沿いには多くの家こそあれ「生活のにおい」がほとんど見られません(家の駐車場に雑草が生えている等で判断)。皆さん避難しておられるのでしょうね。そして川沿いの細道はといえば‥津波にやられた家々が(残念無念)。いろいろなサイトで津波の被害を受けた家画像が公開されていますから今さらここにはアップしませんが‥やっぱり酷い。せめてもの救いは「すぐそばに高台に通じる道があるから助かった人が多かったんじゃないか‥」という希望です(しかもその高台には現在も現地で運営を続けておられる高野病院さんが!是非頑張って下さいませ!)。



左上画像は広野火力発電所(休止中)。さてここからは内陸方面に足を延ばします。

まずやって来たのは久之浜鉱泉「たきた館」さん(右上画像)。こちらには以前宿泊し、翌朝にはイノシシの飼育場を見学させていただいたんだっけ(その時の様子はこちら)。遠目で見てみると、宿の前の広場にはたくさんの駐車車両が。どうやら作業員の方々が宿舎として利用されている様子で、宿の方々がどこかへ避難なさっているわけではないようです。

たまたま通りかかった地元の男性に聞いてみると「原発関連の作業員で部屋は全部埋まっているらしいよ。30人以上いるんじゃないかな」とのことでした。そんなわけで宿の近くまで行きましたが、平日の昼間ということだからか宿の方の気配がありません。ま、皆さん無事であることは確かなようなので一安心し撤収。

続いて訪れたのは手前にある谷地鉱泉です。以前日帰り入浴をお願いしたところ、入浴はもちろんのこと湯上がりには何と妹さん手作りのパウンドケーキまでいただいてしまい心も身体もほっかほかになった記憶のある石川屋さんへと行ってみます(前回訪問時の記録はこちら)。

玄関の方に進んでいくと宿の女将さんがTakemaに気付いてくださり、お互いに「こんにちわぁ」。日帰り入浴は‥うーん、こちらも作業員の方々の関係でやっていないんだとか。実はこちらの宿には事前に電話していて「泊まりは6/20を目途に再開しようと思ってはいるんですが‥」ということを伺っていました。しかし肝心な日帰り入浴の可否については確認するのを忘れていたわけですね(おバカTakema)。

でもこのことだけは申し上げておかなければなりません。

そう言った上でこの場を辞去し、車に乗り込んでメインロードへの分岐まで出てきたところでふと駐車場側を見ると‥

どうやら「止まれ止まれ」という合図のようなので車を止めて降りてみると、妹さんの口から発せられた言葉は思いもかけないものでした。


(ちなみにもしかしたら「おじいちゃん用」だったかも知れませんがまぁどうでもいいことですね)

そんなわけでビニール袋に入れられた3つのパンをいただいちゃいました。いやぁ何と暖かなお心遣いでありましょう、これは本当に間違いなく泊まりに来なければっ!ちなみに左上画像にマウスオンするといただいたパン画像に変わります。さっぱりしたお味の美味しいパンでしたよ、ありがとうございました!

さて再び車に乗り込んで走り出すこと約50mで再び停車。というのも石川屋の女将さんから「下の田村屋さんは(日帰り入浴を)やっていると思いますよ」と伺っていたので、せっかくならお風呂をいただいて来よう(せめて入浴料だけでもこの地で遣ってこよう)と考えたわけです。しかしよくよく考えてみれば石川屋さんには何も貢献できなかったどころか、かえってお気遣いばかりをいただいちゃったわけで‥すみません(苦笑)。

さてそんなわけですぐ下側の田村屋さんへとやって来ました。



建物は近年リフォーム&増築なさったようで内部はかなり綺麗です。

玄関に入り声をかけようとしたのと、宿の方(たぶん息子さんでしょう)がお膳を手にして目の前を通り過ぎようとしたのは同時でした。「あのぉ、入浴‥」「どうぞどうぞ、お上がり下さい!」。よぉっし久々に谷地鉱泉の湯を楽しめそうだぞ!

入浴料は500円でしたが、1000円札を出すとお釣りの500円を渡すのをうっかり忘れた女将さんが「ではお風呂にご案内しますね」というのをすかさずご主人が「おい、お釣り渡してないぞ!」「あ、ゴメンナサイ忘れてた!あれ、100円玉が4枚しかない、誰か100円ないですかー」。いやぁ、もうこのやり取りを聞いているだけですっかりほのぼのしちゃいました(笑)。

そうそう、すぐ上で「お膳を手にした息子さん」と書きましたが、実はこの日はチラ見レベルで10人弱のお食事会が入っていたようでした(老人クラブ系かと)。このような当地周辺の状況でありながら、どんな意味合いの集まりかもわかりませんがちゃんとこちらのお宿を利用なさっている団体さんがおられることにホッとするTakemaでありましたよ。

そんなわけでお風呂へ案内されました。団体さんはもちろんお食事スタートというわけで入浴なさっておらずしっかり貸切。



浴室もしっかり綺麗で万人受けするといった感じですね。

もちろんこちらは鉱泉ですから加温のため循環もしていますが、この界隈の鉱泉のデフォルトである「源泉蛇口を捻るとどんどん新鮮なる源泉投入が可能である」ところはやっぱり嬉しいですね。ちなみに石川屋さんは湯船にある源泉湯を直接加熱する方式で、しかも源泉蛇口が加熱湯の出口側にありますから結構源泉をじゃんじゃん入れてもすぐあたたまるんですが、こちらは蛇口と加熱湯の出口が反対側にありますから、あまり無理に投入すると「半分ぬるくて半分熱い」なんてことになってしまうのかもしれません(実際はどうなんでしょうかね)。

しかし先ほどの久之浜鉱泉といいここ谷地温泉といい、共通しているのはツルヌル感の強い浴感であるということ。PHがいくつなのかについての掲示はありませんでしたが泉質はアルカリ泉だとのこと。Takema入浴時に湯船にあった湯もツルヌルでしたが、蛇口を捻って源泉を出してみると(というか元々ちょろちょろ投入されていたので「さらに蛇口をひねってみた」ところ)、




(ちなみにその上が最高ランクの「ヌルヌル」です)。

現在休業中の丸進別館のヌルヌル感には及ばないレベルではありますが、それはあくまで「巨匠との相対的比較による評価」であり、絶対的ツルヌル(&ヌル)評価においてはかなりの高評価レベルだと思って間違いありません。あ、源泉投入の可否を除けば近隣の高野鉱泉も同じような感じですね。いやぁ何だかマニアックになってきたぞ(笑)。

(2012/2) 田村屋さんからご連絡をいただき、H16年の調査で「PH値が10.1である」ということが判明いたしました。やっぱりかなりの強アルカリ泉ですね。

脱衣場界隈には成分表示およびおみやげのお誘い掲示がありました。麦焼酎かぁ、ここは地元貢献の意味もあるから買ってもいいかな、ふむその隣は乾ししいたけかぁ、こちらはそんなに触手が伸びないなぁなどと思いつつ服を着ながら眺めていたら、「ふとした大きな違い」に気付きました=あら探しレベルでね。

いやそんなことはどちらでもいいのですが(笑)。ちなみにちょっと長湯をしたこともあって汗が引かず、脱衣場のすぐ前にあった自販機で冷たい飲み物を買おうとしたら息子さんが「アイスコーヒーでもお作りしましょうか?」と声をかけて下さいました。しかし「それはもしかしてさっき見たロビーにあったインスタントコーヒーをアイスで作る=ロビーのコーヒーはそもそもセルフで無料のようだったぞ」と瞬時に考え、「いやいや、まずはこれで云々」と申し上げました。そしてこのあと、この息子さんとかの大地震について語ることになったのです。

ここ谷地温泉は福島第一から直線距離で27-28kmだということで、当初は「屋内避難区域」に指定されたエリアにあり、しかしやはり状況が不透明でもあることからいったんはいわき市の避難所に待避したそうです。そういえば石川屋女将さんの妹さんも「一時は千葉の松戸の親族を頼って避難したんです」とおっしゃっていたっけ。

でもそのあと20-30km圏内の(特に原発南側の)屋外避難地域は「避難準備区域(何かあったらすぐに避難できるように)」に区分変更され、どうしようかと思っていたら常連の方々から「営業を再開したらどうだ、否、再開してくれ」という要望が多く寄せられるとともに、どうやら原発の南側の放射線量が低めであることもわかってきたため戻ることにしたのだとか。

これもまた石川屋さんでお聞きした「松戸からいわき市街地の別の家に戻ってきたんですが、おばあさん(しつこいようですがおじいさんかも)が『こんなに近くにいるなら谷地に戻って暮らしたい』というし、自分たちもそう思ったんでここに戻ってきたんです」という流れと符合します。

でも息子さんいわく「ただしここ谷地温泉でも放射線量の測定があったんですが、地上1mとかだと0.3(マイクロシーベルト)なのが、やっぱり地面から10cmだと0.6位に上がるんですよ。そもそも避難準備区域でもあるわけですし、小さなお子さん連れの方からの予約電話があったらこのことをちゃんと伝えなければなと思っています」。そしてその直後、ちょっと複雑な笑顔を浮かべながら「もっとも、原発事故のあとそういうお問い合わせは1件もありませんけれどね」とおっしゃいました。

さきほどの石川屋さんといいここ田村屋さんといい、皆さん何でこんなに素晴らしい方々ばかりなんでしょうかっ!そんなわけでいきなり上記の麦焼酎「三ツ森山」を購入することに決定!いや、Takemaにとってお酒はいくら在庫があっても問題ありませんので(笑)。その代わり次回訪問時の泊まりは石川屋さんでーす(大笑)。
【ここでひと言】

このページをご覧下さる方々に「Takemaの立ち位置」として申し上げておきたいのは、わたしは決して「福島は安全だ、放射能のことなど気にする必要はない、だから自分は行くんだしみんなも福島に行ってほしい!」というスタンスではないと言うことです。

SNS上でもいろいろな意見がありますし、マイミクの方々にも(あ、これでバレバレですね(笑))放射線量を日々チェックしておられる方、政府の公式発表は「いわゆる大本営発表だ」とはっきりおっしゃる方、それぞれにおられます。

でも、それこそネット黎明期の1990年代には考えられもしなかった「個人が様々な(玉石混淆系の)情報を直接得られる」時代であるからこそ、昔であれば知るよしもなかった様々な意見をわたしも耳にすることができるということなのでしょう。

各自の考え方をわたしは尊重します。自分の考え方を押しつけようとは思いません。自分は自分の考えのままに行動しているだけのこと、そしてそれをそのままこのサイトにアップしているのだとお考え下されば幸いです(>ALL)。あ、これは別に誰かからツッコまれたから書いているわけでもありません。Takemaは昔も今もTakemaのペースでやってます。
さてここからは再び海沿いへと向かい久之浜から四倉方面へ。久之浜漁港に行こうと思ったんですがついついボーッとしていてそのまま南下(失敗)。ナビがあっても駄目なもんはダメですね(=Takema脳)。そんなわけで続きは次のページにて。
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