− 2013/3 八丈島&青ヶ島編 その4 裏見ヶ滝見学のあとみはらしの湯でさっぱり。登龍峠経由で三根へ−



せっかくその名を冠する湯をいただいたのですから、次は本家本元の滝にご挨拶しなくちゃです。

実は最初「島の中にある滝だからそう大したもんじゃないかも」と甘く考え、あまり行く気はなかったのです。でも湯上がり後に駐車場で涼んでいたら、ジャンボタクシーで乗り付けた皆さんが温泉ではなく滝見物にと遊歩道へ入っていくではありませんか。うーむ観光タクシーのルートにこの滝見物が組み込まれているということは‥案外に案外?

ちなみにおしんこどんは最初から行く気満々だったらしく、ではではまぁまぁ意見の一致というわけで行ってみましょうかね。ちなみに看板には手書きで「片道10分」と追加書き込みがなされていました。ずっと登りなのかなー、まだ湯上がり汗が止まってないのに(笑)。


思ったより急でもない歩道を歩いていくと、途中に神社への分岐がありました。が、鳥居を越えて上に延びる道はとてつもなく急!ここは帰りに寄ることにしてまずは本願成就に向けて滝へと歩みを進めるのであります。

その先に橋を渡って対岸へと向かう道の分岐があるのですが特に何の案内看板もありません。あとからわかったのですが裏見ヶ滝の遊歩道は周回路になっていて、橋のある道は帰路ということなのですね(もちろんあえてそっちから進んでも特に問題はないのですが)。というわけでそのまままっすぐ進んでいくと‥




いやぁいい意味で予想を裏切ってくれましたよ裏見ヶ滝。しかも、上画像では滝の一部しか写っていないのですが、滝本体はかなり高度もありまた横に広がって落ちていますから遠くからの見ごたえも十分。というわけで帰路側から撮った全体像はといいますと‥



(うーん、滝の裏にわれわれのどちらかが立っていれば大きさが一目瞭然だったのに)




これまでいくつもの人生ならぬ滝の裏側をくぐり抜けてきたわれわれですがここ雷滝とかここセリャランスフォスとか)、まさか離島の八丈島で裏くぐり滝に出会うとは思ってもいませんでした。いや、滝の名前から考えれば一番想定しやすいはずなんですけれどね(苦笑)。ちなみにこの歩道は、その昔、まだ車道などが出来るはるか前からある「島のメインロード」だったのだとか。なるほどそれでは江戸時代の流人の皆さんもこの道を歩いたというわけですね。

そんなわけで気をよくしながら戻っていくと先ほどの鳥居分岐にやってきました。さてそれでは登ってみますか‥でもですね。




登りはまだいいですが下りはかなり厳しそうです。一応その昔登山を趣味としていたTakemaは急な下り道でも手を使うことはあまりないんですが、ここでは念のため使いましたよ(おしんこどんが「Takemaくんが手を使うくらいだから相当だよねー」と言ってましたっけ)。だって、旅行の初日にコケちゃったら冗談にもならないので。


やってきたのは「為朝神社石宮」。流人の石工であった仙次郎氏が天保11年(1840年)に造営したものなのだとか。八丈の流人についてはしばらく先のページにて述べるつもりですが、皆さんやはりイイ仕事をなさっていたんですねぇ。

なお為朝とは平安末期に活躍した源為朝(みなもとのためとも)のことで、保元の乱(1156年)で破れて伊豆大島に流罪となり、そこで逆に島の実権を握ったことから掃討の対象となり、最後は大島で自害したとされていますが(ちなみに「切腹」の初例とされているようです)、ここ八丈島では「大島で切腹はせず三宅島経由でここ八丈島にやってきて結婚生活を送り、のちに八丈小島に移住したあと掃討され、1173年、35才で没した」という伝説が残っているそうです。

少なくも伊豆諸島における源為朝の扱いはまさに「神」であり(祟り神とかじゃなくて)、相当の尊敬を得ていたことがわかります。


このあとは内陸へ向かい、進んだ先にあったのは「東京電力 八丈島地熱・風力発電所」。車のドアを開けるやいなや嬉しいニオイ=硫黄臭が周辺に漂いまくっているのがわかりました。地熱の発電施設はもちろん稼働中のようで、建物上部の排気口からは湯気が勢いよく吹き上がっていました(両上画像にも写ってはいるのですが、背景の雲と重なって見えにくくなっています)。

ちなみにこちらの地熱発電所は平成11年(1999年)に営業運転を開始しその出力は最大3,300kW。風力(最大500kW)と合わせ3,800kWの電力を生み出しているそうです。八丈島の最大電力需要(夏)は11,000kWとのことなので、その約1/3は自然エネルギーで賄っているというわけです。なお東日本大震災後地熱発電の可能性が注目されるようになりましたが、この地熱発電施設は現時点(2013)では国内で最後に建設されたものです。

ここ八丈島では全ての温浴施設が個人ではなく八丈町関係によって管理されており(土地所有権とかまではわかりませんが)、それゆえ地熱発電設置へのハードルが低かったといえるでしょう。しかし国内全体に目を向けてみると、地熱エネルギーの可能性が震災後あれほど叫ばれたのにもかかわらず新たな大規模地熱発電所設置への動きはまだまだ鈍いままです。

その障壁はといえば国立公園法および各地域の温泉管理組合です。国立公園法ではその条文内に「現状維持=新たな施設等の設置は原則不許可」という意味合いの条項があります。でもこれは最近になって「公園外からの斜め掘りならOK」という、これもまた妥協の産物なんだろうな系の判断が出ているので(根本的な転換にはほど遠いですが)、まぁ一歩前進としましょう。

でも続いての各温泉管理組合は難関です。わたし自身いちおう温泉ファンの端くれなので「あの宿あの共同湯の湯が枯れてしまったら」という危惧は大いに抱きます。ましてや温泉地の宿を経営なさっている方々からすればそれはまさに死活問題になるわけですから。

でも、温泉ファンであるからこそあえて言わせていただきます。


別に喧嘩を売るつもりではありません(笑)。でも日本の地熱発電技術はかなり進んでいて、アイスランドやインドネシア、そして2010年に納入されたNZの地熱発電所は現在世界最大の発電出力を誇っています。生産井は深く還元井は比較的浅いということ、また実際問題として日本で稼働している地熱発電所の近くにある温泉が営業休止に追い込まれたという話はほとんど聞いたことがありません(未利用地域の噴気活動が低下したという話はありますが)。

いや、それでもという場合でも「低温度差発電」など現在の泉源を利用した発電などさまざまなアイデアが考えられるわけで、ごく一部の温泉を除き「座して何とやら」という現状維持だけが選択肢ではないと思うTakemaなのであります。

ちなみにどこかのマスコミサイトの見出しにあったのが、反対なさっている方のご意見として「われわれを『地熱発電所の排水』に浸からせるつもりか!」というものでありましたが、僅かな湯でも地熱発電所に利用されるのは反対というのはあまりにヒステリックな感情論のような気もします。

ちなみにおそらく世界最大の温泉(プール)であるアイスランドのブルーラグーン(こちらの湯は、その全量が地熱発電所で利用された「排湯」です。のみならず、この周辺で発電用に使われた湯はパイプラインで首都レイキャビクに運ばれ、おかげでレイキャビクでは各家庭やホテルなどでも「お湯のコックをひねればうっすら硫黄臭のする湯を浴びられる」という、あまりにもウラヤマシイ住環境だったりするのです。

日本では諸所方々にて「法律や既得権の壁=現状改変への警戒」が強すぎ、そのことがかえって物事を前に進めるしなやかさとスピード感を奪っています。地熱に関しても現状はそうですが、今後各分野にて新たな動きが進むことを願います。たとえば福島の土湯温泉における発電プロジェクトのように(と、ここで「あそこはもともと造成泉だから‥」とお考えになった方々、失礼ながら申し上げればそれが思考停止行動そのものなのです)。各地の関係各諸氏による地熱開発へのご検討を願う次第です。

‥うーむ、Takemaサイト恒例の「本題からぶっ飛び大作戦」となりましたんで東電の八丈島発電所に戻ります。ここには付属施設としての発電所PR館(地熱館)があるのですが、2013年3月現在休館していました。もちろん原発事故後の経費削減の一環なのでしょうが、2011年7月に猪瀬東京都副知事(現知事=2013年)が八丈島を視察したようで、その時の副知事のコメントとして、


というのがありました。でもそれから1年半が経ってもいまだに閉鎖されたままということは、東電本社は「顧慮する必要なし」と判断したのでしょうか?(ま、「それどころじゃなかった」という見方もありますが)。

この時も、普通車レンタカーの家族連れが施設前から引き返していきました。常設の、しかも島のエネルギーについて客観的に知ることの出来る施設はここ以外にないはずです。島について、特に旅行者に知ってもらえるPR館の再開は自分としても必須だと思われるのですが?(アイスランドなどでは実際の発電施設を見学できるし、同じ東電施設でも震災前は奈川渡ダムは見学可能でした(現在どうなのかは不明)。このご時世ゆえ発電所施設内の見学は無理であっても、せめてPR館は再開してほしいと思います。


ちなみに発電所ゲート手前の駐車(折り返し?)スペースの脇にはハチジョウギブシが実を付けて‥いや違う、花を咲かせておりました(驚)。そう、左上画像の「まるでヤマブドウの青い実がすずなり」とおぼしきものは全て「花弁」なのだそうです(この時はそれと知らずに細かく観察しませんでした)。実は食用にはならないようですが、鳥は食べるというので何とか人間も可食範囲なのかな?(笑)。

で、少し戻ると右上画像の「えこ・あぐりまーと」へ。農産物の管理や販売をしている施設なのですが、何が「エコ」なのかというと‥


立地からしてまず間違いなく地熱発電所の廃熱利用だと思いますが(そもそも施設の場所からして発電所からいろんなパイプが延びてきておかしくない場所だし=今となってはよき懐かしき時代なのかな)、それはそれとして温室内はまさに南国!(八丈島だって年中暑いわけではないのです。この日はけっこう風が冷たかった)。


左上画像は間違いない、スターフルーツですよね。何だかとてつもなく美味しそうなんですがっ!(笑)。そして右上画像、フツーの木に何か青いものがぶら下がってる?(右上画像マウスオン)。

何だか着生ランの花のようにも見えますがこれはそもそも木の花だし、いったい何という木の花だったんでしょう?温室内の他の樹木からするとたぶん食べられる実が成る気がするんですが(笑)。

さてこのあとは洞輪沢温泉近くの有料施設「みはらしの湯」へと向かいます。この日の宿は底土港近くの三根地区なんですが、この日ミニ往復してきた大賀郷−末吉ルートをまた戻るよりは末吉から三根への直行ルートのほうが興味深いし、また宿のお風呂は温泉ではないので、「だったら濃厚に湯浴みして身体も清めた上で宿に向かおう!」と考えたわけなのです。


ただし一部レンタカー会社はこの北東区間(三根−末吉)の通行をあまり勧めていないようです。というのもこの区間には集落がなく通行量極小、また携帯電話の基地局もないゆえに何かトラブルがあったとしても連絡が取れないという状況なので。

道路は全線舗装でセンターラインもペイントされていますが実際の道路幅は1.8車線くらいのところが多く、またひたすらなるワインディングロード。確かに「こういう道の運転に慣れていないドライバー」だといざというときにコワイかも知れません。ちなみに現地のトラックや軽トラはごく普通にセンターラインをはみ出しまくって対向してきますのでお気を付けあれ。



そんなわけでやってきました「末吉温泉 みはらしの湯」。逆光タイムだったので外観写真は撮れませんでしたが、平屋の大きな施設です。エントランス手前には貯湯タンクがありましたが、さすがにこちらが有料施設ゆえ、温泉スタンドにはなっていないようでした。またここには電気自動車の充電設備もありましたが、このことについてはまたあとのページにて。

で、肝心なお風呂なのです温泉なのです!脱衣場に先客さんの姿はありませんでしたが浴室をのぞくと先客さんが露天風呂にお1人‥


そんなわけでカメラを持ち込みました。このご時世浴室の撮影も「不逞の輩」の存在によりなかなかキビシクなってきていますが、わたしの場合「他の湯浴み客は写さない」というのが絶対的なポリシーですので。


ということで撮影成功!ま、撮影そのものは記録として嬉しいだけですけれど。ちなみにここ「みはらしの湯」だけでなく「ザ・BOON」を除く八丈島の全ての湯はかけ流しです。八丈町もこのあたりの情報公開はわかりやすくやっています。


この日はいい露天風呂のある女湯が当たりということでしたが、男湯からも十分に海は望めました。おしんこどんは「女湯の露天風呂、サイコー!」とのたまっておりましたが、後日もう1度訪問したにもかかわらず、またも男湯女湯の設定は同じだったのでありました(偶数日と奇数日で入れ替え=またも同じ日めぐりだったかぁ)。


でも男湯の露天からだって水平線は眺められます。そしてそれぞれの内風呂や女湯の露天風呂にはなかったという給湯設備、それは「湯を直接味わえる投入口」でした。こちらの湯は基本的に浴槽内直接投入が基本だったのですが、ここの露天風呂だけは上部パイプからどどどぉうと!もちろん飲泉許可はなかったようですが、念のため口に含んでみると(確信犯的に)‥



そんなわけで身体中塩化物泉まみれにてよしとした次第です(何のこっちゃ)。よーしこれで今日のお風呂は〆、あとは宿のお風呂も使わずにくつろいじゃうもんね。ちなみに今回の旅行中宿のお風呂を利用したのは1回だけで、あとは全部外湯で済ませました。

このあとはワインディングの登龍(のぼりょう)峠経由で三根へと向かいます。みはらしの湯がある末吉から三根までは人が住んでおらず車もほとんど通らないということでしたが、ところどころに出作りの畑がありそこに出入りする住民の方や、また道路工事関係の車など、思ったよりも車の通行はあったかなと(夕方だったからかな)。


峠近くの展望広場に車を止めてしばし休憩。天気はめっぽういいのですが風が強いです。と、ここでおしんこどん「ここならいいよね」と呟いて篠笛を取り出しました。はーいわれわれ以外誰もいませんので思う存分どうぞ(右上画像マウスオン)。




ではでは、ワインディングを下って今宵の宿へと向かいましょう。

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