− その5 大塩経由、会津豪雨で被災したにもかかわらず復活した温泉宿へ −



この浴室も屋根のあたりまで水に浸かったところから復旧し、2011/12にめでたく再営業開始!

さて只見までやってきまして、ここからは只見川沿いのR252を下っていくわけです。しかし前ページにも書いたようにこのルートは2011/7末の大水害(会津豪雨)で大きな被害を受けた地域にあります。昨年(2011)10月初頭にやって来たときには国道橋も落ちちゃってましたし、JR只見線に至っては会津川口 − 大白川間がいまだに不通。複数の橋梁が完全に破壊され、下手をすればこのまま廃線となるのじゃないかという悲しき可能性さえあるのです(昨年10月の様子はこちらからどうぞ)。

昨年10月には只見町と下流の金山町を結ぶこのR252も通行止めでしたが、その後片側交互通行の時期を経て今では通常走行が可能。それにしても日本のライフライン復旧スピードは世界に冠たるものがあります。先進国といわれる国の中にも「1度壊れたらなかなか直らない」国も多いですからね。

さて会津塩沢付近の「只見川の展望駐車帯」までやって来ましたが、河原にはまだまだ大量の雪が残っていました。この付近のダムが軒並み貯水を停止し、そして護岸が根こそぎもっていかれた只見川沿いは「この雪解け増水時に大丈夫なんだろうか」とも思っていましたが、何とかもちこたえてくれているようでホッとしました。でも一見すると復旧が進んでいるように見えても、実際に流された家屋や施設などは、

津波の被災地にも言えることですが「見かけの復旧と本当の意味での復興は全く違う」ということです。今回R252沿いには大きな被災家屋こそ見られませんでしたが(2011/10訪問時には1Fがむき出しになったままの家もありました)、見かけと現実は全く違うということを理解していただきたいと思います。そして会津には、浜通りに住まわれていた多くの方々が今も避難生活を余儀なくされていることも忘れてはいけません。

そんなわけで話を戻しますが、ここ只見川沿いの只見町や金山町、三島町や柳津町あたりはかの水害でそれぞれかなりの被害を受けました。というわけでまずは金山町の大塩地区へ。この場所は直接の被害はありませんでした。

ここの炭酸井戸もずいぶん整備されましたねぇ。2005年の初訪問時には建屋など一切ありませんでしたし、いま改めて確認してみたら、その時のおしんこどんはヤカンで汲んだ炭酸水で頭を洗っておりました(大笑)。その時の動画はこちらのページにありますよん。

で、上記リンクページの動画内に出てくるヤカンと、左上画像に見えているヤカンは形状がそっくり。7年前からずっと元気にご活躍?しかし動画に写っている凹みが見えないので「同型の二代目(数代目?)ヤカン」である可能性が高いです。というのも‥

ここのヤカンは、特に秋の渇水期など井戸水位が下がるときなどは「数mも下に投げ込まれる」わけで、その度ごとに多かれ少なかれ内壁に当たってしまうので凸凹になってしまいます。が、左上画像のヤカンにはその凹みが全く見られないんですよね。もっともこれも、この春夏秋シーズンを終えた頃には「歴戦の強者」となっていることでしょう(笑)。

さて、「秋には井戸(=地下)水位が下がる」と書きましたが、逆に春先には雪解けで水位が上がります。で、今回の炭酸井戸の水位はといえば‥

「この日の大塩炭酸井戸の様子」


この日はまだGWの初日、そうそうお持ち帰り品を増やしたくないところではありますが、ふと脇を見ると段ボール箱に入ったペットボトルが目に入りました(左上画像参照)。しかもそこには「ご自由にお使い下さい」と書かれているではありませんか!というわけで‥

というわけで1本分汲ませていただきました(感謝)。ありがたかったなー。

このあと、画像はありませんが「たつみ荘」さんにご挨拶に伺いました。温泉好きの方であればご存じの方も多いであろう「季節限定露天風呂」のお宿であります。わたしも過去に何度かおじゃましておりましたし、水害後の2011/10には「60年ぶりに姿を現した河原の湯」にも入浴させていただきました(その時の様子はこちら)。

ただ、2011/7の会津大水害では、高台にあるにもかかわらず20m以上もの水位上昇により1Fが完全冠水(恐しい‥)。さらには只見川沿いの斜面が削られてしまい、トータルとして「ただごとならぬ被害」を受けてしまわれました。しかし諸々さまざまのご苦労の末、元の建物を再営業可能な状態にまで手を入れられ、ようやくこのGW前から「仮営業」にこぎつけたそうなのです。

今回はすでに別の宿に予約を入れていたのでこちらへの宿泊は叶いませんでしたが、せめてご挨拶だけでもというわけで訪問したわけです。実はご主人とお会いするのは今回が初めてでしたが(これまではいつもなぜか女将さんばかりが応対して下さっていたのです)、Twitterでフォローして下さっていることもあり「おぅ、Takemaさんかい!」と、快く招き入れて下さいました(有り難い‥)。

おしんこどん母子を車で待たせていたこともありご挨拶程度の時間しか滞在できませんでしたが、わたしが席を立とうとしたタイミングで到着なさったグループがありました。ふとお顔を見てビックリ。去年NHKの番組収録時にご一緒した富山のきよちゃんさんではありませんか!何でも仮オープンの噂を聞きつけさっそくお泊まり予定で駆けつけたのだとか。やるなぁ。

ご主人に「今度は是非泊まりに来ます!」と申し上げた上でたつみ荘さんを辞去し、いよいよ今夜の宿宮下温泉へと向かいます。が、ここからは悲しいかなまた「水害の爪痕」を眺めながらの移動ともなるのです。

会津横田駅近くにあるR252国道橋の二本木橋は仮橋が架けられ通行可能となっていましたが、でもあくまで仮橋です。一方で本名ダムや宮下ダムは相変わらず水門がフルに開けられていて怒涛の放水モードでした。本名ダムあたりは昭和20年代末期に完成の古いダムですから、もしかしたらもうそのままでは使えないのかも知れません。

そしてそのすぐ下流にあったJR只見線の第六橋梁はといえば‥(右上画像マウスオン)、

たつみ荘さんから少し上流にある、同じ只見線の第七橋梁では落下した橋の鉄骨があらかた撤去されたという話ですが、こちらはダムの直下という位置が災いして撤去ができないということなのでしょうか。いうまでもなく再開通に向けた工事の気配などは一切ありませんでした。六十里越えの只見線にもう一度完乗したいぞーっ!

さてそんなわけで、今宵のお宿宮下温泉の「栄光舘」さんに到着です。ページのタイトルにも書いたとおり、こちらのお宿も豪雨で床上というか1階部分が全て水をかぶったといいます。地元建設会社「佐久間建設」さんのサイトに載せられている「只見川大洪水の記録2011」(PDFファイル)のP23、P47-49に当日および被災直後の栄光舘の様子が画像で載せられていますのでご覧下さい(重いファイルですが見る価値はあります)。

しかしこちらもたつみ荘さん同様きっちり手を入れ、2011年12月に営業を再開したそうなのです。われわれは2008年10月にこちらに泊まったこともあることから、この旅行の計画時には「うん、初日の宿は是非ここにしよう!」と考えていたわけです。風評のこともあるでしょうから少しでもお役に立たなきゃね。

通されたのはお風呂のある新館2階でした。案内してくださった仲居さん、階段の踊り場まできたところで「ここまで水が上がったんですよ」と教えて下さいました(左上画像マウスオン)。なるほど、確かに水の線が今でもはっきり見えていますね。

今回の部屋は2階なので直接の冠水被害は受けていません。2部屋をご用意いただけたので(予約時の電話で「豪雨の前にも泊まりに来たんですよ」と言ったのが効いたのかも知れない(笑))、Takemaは1人部屋です。すでに布団が敷かれていてTakema的には「よしよし」。夕食前に眠たくなることだって多いですからねー。

ちなみに窓からは只見川の支流が見えます(右上画像マウスオン)。手前の湯気抜きが付いた浴室は女湯ですがもちろん中の様子は何も見えません(そりゃそうでしょ)。そんなわけで、ページトップの画像にもあるようにいざお風呂(男湯)へまいりましょ!

以前と同じく笹濁りの湯が満たされています。味は薄ーい塩気+金気なんですが、湯口がこのように成分でサルノコシカケ的に成分凝結しているので手のひらに湯をためるのはちょっと大変でした(笑)。しかし実にいい感じの凝結だよなー。



お湯はバッチリ適温(お好みに応じて移動できる)。窓からは対岸の「満開の桜」も望めました。

と、湯上がりにはこんな掲示を見つけてちょいと嬉しくなりました(左上画像マウスオン)。こちらの栄光舘さんが只見川を挟んだ対岸にある元町営「ふるさと荘」の指定管理者になったという話は今回の予約段階で調べているときに知ったのですが、なんと「こっちに宿泊すれば向こうも無料入浴OK」とは!

実はこの時点では「この旅行前半は湯めぐりメインというわけじゃないし、ふるさと荘の湯には前にも入っているし、たぶん行かないだろうなぁ」と思っていたのですが、結局翌朝行っちゃったんですけれどね(しっかり湯めぐりしてるじゃないのさ)。

さて本巻と新館の間の通路脇には被災前と同じように籐椅子のくつろぎスペースが。で、2008年宿泊時のページと比べてみるとどうやら「全く同じモノ」であることがわかりました。ただし流されずに残ったものの再利用なのか、それとも「全く同じものを再購入したのか」はわかりません。また、新館入口内にあるくつろぎスペースは、以前は囲炉裏があったのですが今回は全く違う調度品が置かれておりました。



そんなわけで夕食です。左上画像以外にもたくさん出てきましたが、何とか全てを平らげることができました。




グルメ系サイトじゃないので細かくは申し上げませんが、どれもおいしかったですよ。

そんなわけで翌朝です。もちろん早めに起きての朝風呂はいわずもがな、湯気抜きから舞う湯気が「早くおいでー」と誘ってくるので行かないわけにはいきません(もっとも左上画像は女湯の湯気抜きですが)。5:30にいざお風呂へ。

昨晩は法事関係の団体もおられたので結構賑やかな館内でしたが、実際のところ昨晩の宿泊組は4-5組くらいだったのかな?昨日もそうでしたがやっぱり福島というだけで敬遠されているところもあるのでしょう。人それぞれの考えがあることでしょうが、わたしはこれからも福島ファンであり続けますよん。

男湯には目隠し等一切設置されていないので、内風呂であっても窓からは広く景色が望めます。下流側に目を移してみると‥あ、あれはこちらのお宿が管理している「ふるさと荘」ですね(右上画像マウスオンで拡大)。こちらとの「棲み分け」はどうなさっているんだろうとふと考えちゃいました。

朝食はシンプルないわゆる「旅館の朝ごはん」ですが、かえってこれがありがたいんですよ少食夫婦には。それに早めにお腹が空けば早め=空いている時間のランチもOKですから。

さてチェックアウト後はそのまま大峠道路経由で米沢へ抜ける予定でしたが、お宿の方から「大林のカタクリと桜はご覧になりましたか?え、行かれていない?では是非ちょっと足を延ばしてくださいね」とのことで行ってみることにしました。うん、かなーりヨカッタですぞ。
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