2020/3 早春の南東北お出かけ編

- その2 浜通りの常磐線再開通各駅をめぐるの巻 -



坂下ダムの桜がまだなのはわかっていましたが再訪問。あれま、タムシバの木もあったのね。

というわけで千葉を出発。とはいえこの日の泊まりはいわき市内なので極端に早い出発ではありません。普段の出勤より少し遅い8時くらいだったかなと。で、いつもの通り常磐道を一気に北上し、いわき四倉PA到着は11:30ころでした。ちょっと休憩してさらに北上‥

ここで、「ん?この日の泊まりはいわき市内って書いていたのに、どこまで行くつもり?」とお考えになったあなた、正解です。まずは浪江駅まで北上します。というのも、この日から遡ること約1週間前の2020/3/14、常磐線に最後まで残った不通区間(富岡-浪江)が再開通しまして、それと関連して再開通区間内の各駅(夜ノ森、大野、双葉)駅前まで立ち入ることが可能となりました。

車での訪問ではありますが、これまでも立ち入り規制区域が解除されると比較的すぐにやってきていたTakema、今回も各地各駅を北から南へとめぐっていき、そしてそのままいわきのお宿にチェックインしちゃおうと考えたわけなのです。



常磐道を北上し、浪江ICから浪江駅へ。浪江駅には去年(2019)の春も来ていますが(この時です)、この駅に初めて降り立ったのはたしか1977年だったんですよ。福島駅から国鉄バスに乗ってこの駅までやってきて、ここから常磐線で仙台まで抜けたはずです。わたしの人生初めての長期お出かけでしたので(当時中1)、もう45年近く前のことなのに今でもかなり覚えています。この駅舎が横長の平屋で、駅舎前に階段が数段あったことも‥。

往時と明らかに違うのは駅周辺の賑やかさだと思うのですが、いかんせん当時乗り鉄派だったわたしには街の風情など興味がなかったのか、そちらの方面の記憶は皆無なのです(苦笑)。

さてこの時点でお昼ごはんタイムです。駅前にも軽食カフェはあるのですが、せっかくなら町内のお店で食べたいと思い、




こちらのページから閲覧・コピーできます)。

めずらしく事前調査してきたわけで、ただ、ラーメンとかトンカツならばある意味どこでも食べられるので今回は除外するとして‥ん?1軒だけ妙に離れた場所でポツンと営業しているお店があるぞ。



ほほーう。まず間違いなく手打ちうどんだろうしこれは期待できるかも。というわけでいざそちらへと向かってみることに。途中ちょっとわかりにくい分岐もありますが、幟が目印となり無事到着。





もちろん嬉しい系の言葉です!このキャッチコピーも、この雰囲気も一瞬で気に入りました!

ただしこの段階での下調べは「たぶん手打ちうどん」「この日は営業しているはず」くらいのものだったんですが、実はこちらのお店、2019/12に開店したばかり、訪問時点でまだ営業開始後3か月だったというわけです。何だか「おだかのひるごはん」(前向きな形で営業休止、訪問時のページはこちら)などを思い出したりしますが、何よりもこちらは仮設に見えても恒久的にここにあり続ける地元密着の食事処であるということが大きな違いです。

また、このページをタイプしながら検索してみたら、こちらのご主人がなかなかすごい方のようでびっくり。

東京の大学を卒業後、飲食業界へ就職。‥1本の映画の影響を受け、1年間休職すると同時にアメリカへと飛んだ。「どうせなら」と、そこから世界一周の旅へと舵を切った。‥

震災以降浪江町を離れている家族がいる。「いつか浪江町へ帰って来たいんじゃないかなと思っていて、ならば、今からそのきっかけを作っておきたい。」というタイミングが、自身の人生のターニングポイントと合致したのだ。

「年配の方が多い…つまり年配の方からのニーズがあるということ、ほっこりできるような食べ物であること、そして今の浪江町にないもの—。それがうどんだった。」

上記内容を引用させていただいた、西内食堂について詳しいページはこちらです。それにしても、普段使いの帽子が「レイキャビクのハードロックカフェキャップ」って渋すぎで、もうそれだけでこのご主人がタダモノではないと拝察されます。ピークタイムは過ぎていて厨房にも多少余裕があったようだったし、このページを読んでいたら少しお話を伺えたかも‥ま、次回があるさということで。

で、お店のメインディッシュたるぶっかけうどんが出てきました!



おしんこどんは左上画像の「究極のぶっかけ(全部のせ)」780円、Takemaは右上の「特製ぶっかけ」580円を注文。讃岐うどん系ということですが、残念ながら讃岐でうどんを食べたことがない&実は讃岐うどんではないという丸亀製麺のうどんすらも食べたことがないTakemaゆえ(笑)比較の対象が存在せず、ただ「美味しかった」としか申し上げられないのが残念です。でも次回の浪江訪問時にもここに食べに来たいゾ!

なお、うどん以外に気になったメニューが「最強のどんぶり」(680円)でして、どうやらドンブリには「ハンバーグ・コロッケ・とり唐・カレー」がてんこ盛りなのだそうです。自分には無理そうですが(少食男子というか主義者なので)。

というわけでお昼ごはん無事終了。ここから南下する双葉町や大熊町にはまだ今のところ食事処が「ほとんどない」に等しいので(特に双葉町にはおそらく皆無)、浪江で食べておいたことでこの後も安心です。ちなみにこの日は日曜日だったため、大熊町役場周辺の各施設も休業日でした。

ここからしばらくは前回訪問時(2019/4)のルートを再トレースするところも多いのですが、前回は桜が満開だったのに対し、今回はまだ花が少ないんですよね。でも前回は来られなかったおしんこどんに各地を見てもらおうという思いがあったので、まぁお許しをば(おしんこどんは案外忘れやすいんですが=ここだけの話)。



さて、まずは請戸川沿いの桜並木に来てみました。が、当然ながら桜はまだですね、そりゃそうだ、前年(2019年)は4月12日に訪問してようやく満開より少し前だったんだから、それより3週間も前なら咲いているはずがありません。あ、その時の画像も載せておきましょう。



逆サイドからの撮影なのでちょっと比較しにくいですが‥。しかもこの日が曇りだったのは残念。

しかしあらためて見てみると、去年は河川敷の枯れ草が綺麗に刈られていたんですね。今年はどうだったんだろう?(確かこの請戸川河川敷の刈り払いを首都圏の方(神奈川?)が自発的&定期的にやっていたというニュース記事を読んだ記憶があるのですが、地元新聞の過去記事を検索した限りでは見つからないなぁ)。



このあとは町内にあるGSでガソリンを補給し(R6沿いではなくややわかりにくい場所にあるので、震災前からたぶんほぼ100%地域在住の方がお客かと)、昨年ここで教えてもらった丈六公園へ。



昨年もそうでしたが、やるべきことありまくりと思われる浪江町としてはこの公園の整備が重点優先とはなっていないようで(そりゃそうです当然です)、草刈りを行った形跡は一部だけでした(ごく一部だったので、行政としての作業ではなく地元の方がボランティアで行ったのかも)。

でも踏み分け道はしっかりしているので迷うことはありません(というか公園なので迷う広さのレベルでもない)。というわけで頂上にある展望台へ。



展望台自体はコンクリート造りなのでまだ全然へたっていません。手すりも見た感じでは錆が目立っていないのは、震災の前にメンテナンスが入っていたのかなぁ。

展望台から海の方向を見てみると煙が上がっているのがわかります。調べてみると仮設焼却施設のようで、この日は日曜日でしたから基本的に24時間運用なのでしょう。つまりは「まだ終わっていないよ」というわけです(この施設はおそらくこちらかと)。もしかしたら域外からの処理も受け付けているのかも知れません。

というわけで駐車場へと下っていきます。あちこちに黄花スイセンの群落があり(右上画像マウスオン)、やっぱり球根系は養分を蓄えているぶん強いよなと思いつつ‥



いや、でも「怒涛系」ではないと自覚していたので焦ることはありませんでしたよ。そもそもお昼ごはんを「きっちり一人前」食べるとやってくる流れなのです(だから平日ランチは量少なめ)。でもね、いずれ「来るものは来る」わけですよ!でもねー(余裕派)。





ただし一抹の不安はありました。この時期の市井においてはいろんなペーパー類が品薄というか店頭から消えていたわけです。あちゃまーどうかな?と思いつつ個室に入ってみると‥



感謝しつつ用を足させていただきました。それにしても、昨年同時期この向かいにあった家屋はすっかり解体され更地になっていました。少しずつ「現状に即した姿」になっていくのですね。でも、少し下ったところにある「黄色いハンカチ群を飾ったお宅」は旗もそのままですっかり日常生活を取り戻しているようでした。

さてこのあとはR6(国道6号線)を南下していきます。R6の通行止めが解除された後初めて走った時などは(この時です。全線撮影動画もあり)たいそう暗澹たる気持ちにさせられたものですが、現在は限定的ながらGSが営業していたり、中間貯蔵処理情報センター(見学施設)がオープンしていたりと、あくまでごくごく一部ではありますが人の動きが戻りつつあります。そして2020/3/14の常磐線再開通に合わせる形で双葉町や大熊町の駅前周辺区域が規制解除されたわけで。

自分はこの流れについていいとも悪いとも申し上げるつもりはありません。皆さんそれぞれに様々な意見をお持ちでしょうし自分も個人的な思いはありますが、このサイトはその思いを主張する場にはしたくありません(まぁ時々口が滑りますが)。自分は「復興の状況をこの目で見続けたいから訪問する、また相双地域は震災前の未訪問空白地域だったのでいろいろ見てみたい」、ただそれだけのことです。

というわけでR6を南下してまずは双葉駅へ。



駅前はピカピカに整備され駅舎も新築されていますが、いっぽうで駅前の民家は震災当時のまま放置で、全体として荒涼感が漂います。双葉町はこれまで全域が帰還困難区域でしたから「全てはこれから」なのですが、早めに規制が解除された楢葉町などと比べれば圧倒的な出遅れ感は否めません。これからどのような歩みを進めていくのでしょうか。



ホームの側を向いて設置されている「復興祈願ダルマ」はすでに両目が入れられていました(左上画像マウスオン)。駅ダルマとしては「運行再開、駅機能も再開」というわけでの目入れだったのでしょうが、町としての復興はまだようやくスタート地点に立ったところ。先は長そうです。



続いて大熊町の大野駅へ。こちらも新築の駅舎なのですが、立ち入りが許されているのは駅前広場とそこに続く道路だけで、周辺の建物や道路は今も帰還困難区域となっています。



残念な風景ではありますが、いつかこのゲートが開く日を待ちましょう。

ちなみに大熊町なのにどうして駅名が大野なのかについてですが、そもそも大熊という町名は1954年に「旧大野村と旧熊町村」が合併して付けられたものであり、常磐線はそれよりも50年も昔に開通していますから、駅名だけ旧村名のままなんですね。「大熊駅」に改名しなかったのは、少なくともその頃には「わが村」意識が残っていたからでしょうか。

なお聞きかじった話なのですが、そもそも常磐線は現在のR6沿いに広がる熊町村の側を通る予定だったのだそうですが、熊町の住民から「鉄道が通ると云々」というような反対運動が起き、その結果常磐線は富岡から大きく内陸側に迂回し、夜ノ森駅と大野駅を経由した後再び海沿いに戻るという変則的な変則的なルート取りをしているのだということです。熊町村、やっちゃった感が‥。まぁその後R6も整備されましたが。

と、ここで上り列車が到着するようなのでちょっくら見学。





6両編成の列車が入線してきました。まだ開通して1週間ほどなのと、この日が日曜日だったこともあってそこそこのお客さんが乗っていました(ざっくりで50%の着席率)。ここ大野駅でも数名の乗降客がありましたが、皆さん地元の方ではなさそうな雰囲気でした(まだ仕方がないですね)。

さてこのあとは、同じ大熊町内の大川原地区へと向かいます。というかまだそこしか自由に歩き回れないので‥ちょっとミニ商店で買い物(地元に貢献)しようと思ったからなのですが、残念、日曜日は役場そばのヤマザキショップは定休日なのでありました。ちなみに近隣の大熊食堂も、ダイニング大川原もそれぞれ日曜日は定休日。大熊町に来るなら平日ですね。

仕方がないのでこれまた昨年に引き続き坂下ダムへと行ってみましょう。桜がまだなのは当然わかってますが。







しかも、昨年はダム湖沿いに一番奥まで行かれたのですが、「大雨災害により通行止め」ですとぉーっ!しかもダムカードは新型コロナ対策で配布休止中だとか。まぁしゃぁないですので周辺をうろうろしていたところ、このページトップ画像のタムシバの花を見つけたわけですわ(ちょっとほのぼのした)。

なおこの坂下ダムですが、やはり場所柄そういうことだったんですね。「このダムは、農業用かんがい用水及び東京電力(株)福島第一原子力発電所の工業用水を目的につくられたものです」との掲示がありました。ダム竣工が1973年、その当時にはすでに1号機が稼働していましたが、その後の増設を念頭に建設された原発の落とし子というわけです。

さて再び県道35号に戻り富岡方面へと向かいましょう。とはいっても距離的にはすぐでして、何といっても大川原の大熊町役場から200mも進めばもう富岡町との町境なのです。ではでは夜ノ森駅へ。



駅の再開業に合わせて夜ノ森地区東側の駅周辺道路だけは規制が解除され、そして何と自由通路設置により新たに西口が設置されていました!そしてまぁ何とも立派な駅に。夜ノ森駅に初めて足を運んだのは2014/3でしたが(この訪問直前に駅西側が居住制限地域に規制が緩和されたのでした。その時のページはこちら)、







それから何度となく西側の桜並木から駅を見てきましたから(この時とかこの時とかこの時とか)、自分としては間違いなく周辺の駅では一番愛着がある駅でもあります。無人駅とはいえ、今やエレベーターまで設置された立派な造りに‥。

ツツジは左上画像の法面にも見えているようにかなり強剪定されてしまいましたが、そもそもツツジは剪定に強い樹種だということで、こちらは気長に待つことといたしましょう。やがては斜面一面に花開く日もやってくることでしょう!なお斜面は固められているように見えますが、素材はモルタルではなく園芸用の透水仕様なのだと思われます。そりゃそうだろう。

さて東口へ。こちら側に足を踏み入れるのは初めてなのですが‥





とはいえ、画像を見てもらえばわかるとおりその奥の家々に立ち入ることはできません。いまだ帰還困難地域指定されているからですが、ここ夜ノ森駅東口周辺の規制解除については2023年春が目標となっているようです。この時点でも「あと3年かぁ‥」と思わざるを得ないと同時に、



2019/8に訪問したウクライナではチェルノブイリ原発事故当時南西向きの風が吹いており、そのため放射能を含む風がまともに吹き付けた松の木の森は枯死してしまい埋設処分されました(Red Forest)。しかし原発からほぼ同距離にあった人口5万人のプリピャチ市は「北西」に位置していたため、少なくとも直撃の被害だけは免れたわけです。

太平洋にはごめんなさい的発言ですが、「あの日、真西の風が吹いていたら、状況はだいぶ変わっていただろうなぁ」と。

このあとは桜並木を抜けて(停めませんでしたが)富岡駅へ。現在の駅になってからもう何度も来ていますが、駅周辺はもちろん中心部にも新しいアパート(定住者用ではないかなとも思うところはありますが)が建てられていて、それこそ2014年当時とは明らかに違う様相です。子どもたちの姿も見受けられ、南の楢葉町から数年遅れとはいえ前に進み始めていることがはっきりとわかります。



すっかり整備された富岡駅も、6年前(2014/3)にはまだ右上画像のような感じでした。



というわけで、駅のお隣にあるコンビニ的店舗の「KINONE」さんへ。こちらでは川内村にある「Cafe AMAZON(アメィゾン)」のコーヒーも飲めるのですが本日の目的はそちらではなく「スパークリングSAKE 萌(きざし)」の購入です。

右上画像にあるように富岡産のお米を使用した日本酒、これは売り切れる前に是非とも購入してみなきゃというわけで買いに来たわけです。スパークリング仕様にしたのは女性を含めた万人受けを考えたのでしょうかね。楽しみに飲んでみます!

というわけで初日の立ち寄り地はこれにておしまい、この日のお宿へと向かいましょう。

[戻る] [次へ]